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沖縄カカオプロジェクトの新しい仲間 tsuna30 2024w

CPAO・リサチョコレート製造を目指して     

沖縄カカオプロジェクトの目指す社会を共に築こうとする仲間にCPAO(シーパオ)が加わりました。同じ原料と製法でのチョコレートの新たな作り手として、プロジェクトへの理解を深めていただくために2023年2月に沖縄へ、4月にはチョコレートを製造している陸前高田の工房「椿のみち」へCPAOのメンバーをお招きし研修を行いました。陸前高田から大阪へ戻る途上の東京で代表の徳丸ゆき子さんにお話を伺いました。

沖縄での研修

土屋:沖縄研修はいかがでしたか?

徳丸:普通会えない生産現場の方にお会いできて良かったです。包み隠さず教えてもらえフェアトレードの透明性、オープンさに驚きました。普通は踏み込めない部分があったり、紹介料が必要だったりするのに、何でも質問して良いし、西平黒糖さんとも直接取引してと言ってくださって。

土屋:西平黒糖さんとCPAOさんとの間に入るなんて考えたことはありません。私達はチョコレートを販売し収入を得ていますから。それよりも仲間を増やしたい。ずっと搾取されてきた沖縄に新たな産業をつくり、応援したいのです。ですから「沖縄カカオプロジェクト」を前面に出して、どうして沖縄なのかと聞かれた時に沖縄の立場、現状など含めたプロジェクトの目的を伝えてください。

工房での製造研修をうけて

土屋:陸前高田の工房での研修では製造技術をお伝えしました。

徳丸:一緒に行った者がいろいろと遠慮なく質問しても、工房の皆さんが裏打ちされた経験から即答されていました。もちろん最初からそうだったのではなく、ミスばかりだったことをきちんと記録に残し、それを宝にしていました。

土屋:失敗を恥ずかしいから隠すのではなく、注意すべきところとして引き継いでいます。チョコレートを作ったことがない人達が、作りたいという思いだけで頑張ってきました。

徳丸:それも驚きです。チョコレートだけでプロのショコラティエになるのに。本当に私たちにできるのかと思いましたが、しっかり勉強させてもらうつもりで行き、実際に体験して元気と勇気が出ました。テンパリングの調整も、銀紙の包装も難しそうですが、数をこなして自分たちのものにできるよう、戻ったらさっそく取り組みたいです。

土屋:CPAOさんのホームページを工房に伝え「応援しましょう」と言ったら、チョコレートを作る仲間になってくださることを皆が喜び、話し合って素晴らしい研修計画を立てました。自分たちのやってきたことを伝えられるのは彼女たちの喜びであり誇りです。

徳丸:皆さんのチョコレートに対する愛がバシバシ伝わってきました。どうしたらそこまでの気持ちになれるのか謎です。

土屋:皆が笑顔になれる社会、弱者にしわ寄せのいかない社会にしたいというネパリの目指す未来像が共有できているのだと思います。ネパリの想いが詰まっているカタログを読みこんでいますし、一番古い工房スタッフの伊東恵美さんがいろいろなことを伝えてくださっています。若手スタッフの大場茜さんもネパリが目指すことを理解し、「ネパリらしいかどうか」を判断基準にしています。

徳丸:ネパリ愛がすごい。チョコレートの品質チェックも春代さんに聞くと「大丈夫、OK」と言われるので聞かないと(笑)。

土屋:私に聞くと甘いから聞いちゃだめと言われていると聞いて、これなら信頼できると思いました。自分たちのプライドで作っています。あるスタッフは、以前勤めていた食品工場では自分の意見が言えず、言われたことだけやればいい、仕事はそういうものだと言われていたそうです。

徳丸:言われたままにやるのが当たり前だと思っていた人が、ネパリで目覚め、エンパワメントされたことが分かります。人はそんなに変わるものなんですね。本来の技術者はそう。女性が職人としてパリッとかっこよくて嬉しかったです。職人を育てないといけないと思いました。生き方が変わります。背中を見て育つ部分もありますね。

土屋:言っていることとやっていることが違うと思われたら、言葉だけでは伝わりません。横浜から事細かに指示できないので、自分で考えないとだめだと言い続け、意見を受け止めているうちに、発言が増えました。

徳丸:自分たちもCPAOワークスで同じようなアプローチをしていますが、明らかな違いは椿のみちが「ビジネス」だということ。私たちがやっているお弁当作りなどは販売目的ではないので、美味しい、嬉しい、また作りたいはありますが、自信や誇り、主体性にはなかなか行きつきにくいのでしょう。マーケットに晒され厳しく評価されるのとは明らかに違う、自分たちになかったのはそこだと思いました。

土屋:いろいろと見ていただいて、自分たちのやっていることが評価されて嬉しいです。沖縄でのチョコレート作りが実現できず挫折感をもち悩みましたが、陸前高田に自社の食品加工場をもっていることに気付きました。工房は椿油だけでは赤字でしたが、チョコレートを始めて工房の役割が増えて存在感が増しました。生産者になって、自分たちで製造から販売までできるようになり学ぶことも増えました。最初から工房をあてにしていたわけではないけれど、まるでそのために工房があったかのようにピッタリはまりました。

徳丸:必然かもしれない。

土屋:そんな奇跡の連続です。

徳丸:私たちもこんな機会がもらえたことは奇跡です。

土屋:以前から仲間になってほしいと思っていました。

徳丸:自分達にできるはずがないと思っていました。仲間にいれていただいて嬉しいです。研修を受けたメンバーも帰ったらさっそく作ってみると張り切っています。知的好奇心が芽生えて、調べ始めています。なにも知らなかっただけに、スポンジのように吸収しています。

CPAOらしい事業を模索

土屋:ネパリはカカオニブを沖縄の会社に依頼して作っていますが、CPAOは就労支援事業所を立ち上げるとか、自分達で全工程できるのではないでしょうか。

徳丸:仕事の種類が多いほうが沢山の人が関われますし、全行程一貫してやりたいです。ただ、どういうやり方が自分たちに相応しいか経験しながら考えていきたいです。何のためにやりたいのかがぶれないように。若い人に仕事を作りたい。仕事がいかに糧になるか。お金だけではない仕事の大切さを目の当たりにしています。

土屋:CPAOにとっていい方法を選んでほしい。人は仕事で輝きます。

徳丸:これぐらいでいいやという遊びの仕事では輝けません。

土屋:趣味はやりたいことをやりたいだけやって満足ですが、仕事は、できないと思ったこともできたりと可能性を広げますね。

徳丸:製菓学校で学んだわけではないのに、ドイツのマイスターのように、ひとつずつ学んでいく職人の格好良さが工房にはありました。高いお金を払って製菓学校に行き、自分の店を持つことを目標に頑張っても、薄給で奨学金の借金だけが残り、潰れていく若者もいます。若者を大切にしていない。どうしたら、人を大切にできるかを考えていかないといけません。チョコレート作りに関わる人には沖縄と工房は外せません。自分が春代さんや完二さんから教わったので、実際に製造を行う人を連れていって沖縄カカオプロジェクトを伝えたいです。

CPAOの目指す役割

徳丸:今回チョコレートづくりに関心を持ち、一緒にやってみたいと言ってくださる方々は、CPAOの活動に長年関わってくださるシングルマザーや若者になります。シングルマザーの方は、子どもの頃に貧困だったり、虐待を受けた経験をお持ちだったり、児童養護施設出身の方だったり、若者も両親を亡くしていたり、片親のもとで苦労してきたり、何らか子どもの頃におとなや社会から受けた負の影響によって、今もなお、心や身体にダメージを持つといった方々になります。今では一緒に、ごはんを食べたり、過ごす時間も多く、足りないところを助け合う、信頼できる仲間となっていますが、出会った頃はみなさん人間不信で、孤立しておられました。長年関わる中で、「されてばかりでは申し訳ない…」「助けてが言いにくい」といった声があがり、子どもたちに食べてもらう野菜作りから始まり、それらを使ったごはんを子どもたちにつくってくださるようになりました。

さらに、昨年2022年の春からは、ネパリさんのコーヒーの生豆をお分けいただき、丁寧に焙煎して一つずつ豆も挽き、ハンドドリップしてお出しするカフェも始めています。リーダーのシングルマザーの方は、「美味しいと喜んでもらえてうれしい」「さらにもっと色んなことがやってみたい!」と自信が少しずつつき、何かあると謝ってばかりで引っ込み思案だった方が、心も身体も健康になっていくのを目の当たりにし、仕事というより、人には、他人に喜んでもらえる、役に立てるということが大切なんだということを教わっています。

土屋:ネパールで仕事や様々な経験を通して女性たちが自信をつけて輝いていく様子をたくさん見てきました。日本でもCPAOさんのおかげでそうした場に関われて嬉しいです。

徳丸:個人が全然大切にされない社会で負の再生産が行われています。私たちは小さいことしかできませんが、アウトリーチしても受け皿が社会にないので、ロールモデルのひとつになろうと思います。

土屋:ネパールの奨学生も、長年続ける中で、先輩の姿を見て、頑張ればああなれると子どもたちが思えるようになっています。

徳丸:それを若者に伝えたいです。パパ活して、闇バイトしてではなく。

土屋:本で偉人伝を読んでも別世界の人と思ってしまいがちですが、身近な人を見たら刺激になると思います。

徳丸:沖縄や工房でそれを春代さんが私に見せてくれました。チョコレート作りなんて絶対無理と周りから何回も言われ、そうかもと思いつつ、現場に行き、年齢に関係なくやっている人をみたら、できると思えました。

土屋:工房の彼女たちはあそこまでできるようになりました。長い休みは嫌だというほどに工房で仕事をするのが楽しいと言っています。頑張ればできると自信をもって言えます。

徳丸:実際に見たから言えます。恥かしくないものを作らなければと思います。買い支え、売り支える応援をネパリはずっとしてきました。これがフェアトレード。若い人は、こういうことを小さくてもいいからしたいと思うでしょう。大きいと大切にするのが難しくなります。

土屋:大きくなると理想を貫けなくなりがちです。

徳丸:それはやりたくない。傷ついた若者たちを、さらに傷つけるなんて裏切り行為はできません。笑顔でいてほしい。でもハードルが高いと思っていたら、実際にやっている人がいました。人間の幸せってお金ではない。CPAOって何かと訊かれたときに「訳ありが集まってワイワイするところ」と子どもが答えたと聞いて、その通りだ、それを続けるにはどうしたらいいか、創っていける社会にしていくにはどうしたらいいのか考えました。その子も訳あり。皆訳あり。そう自分が言えるのがかっこいい。たぶんセレブな人もワイワイ集まっていますが、同じことをやっても価値観が違います。CPAOや工房の景色の方が自分は好き。楽しみしかない。あとは自分たちが頑張ります。

土屋:できると思います。そういう場に関わらせていただけて光栄です。CPAOは毎日のようなSOSへの対応など大変な状況の中で新しいことを始められるのですから、無理せず、できることから、ゆっくりやっていきましょうね。Slow Small Sustainable 、ネパリ・バザーロの活動のモットーです!


沖縄最北端の辺戸岬に建つ祖国復帰闘争碑にて。

徳丸ゆき子(写真右)
自身の不登校経験を経て、1998年よりNPO 法人にて不登校・ ひきこもり支援に従事したのち、2002年から国際協力NGO の国内事業部に所属。子どもの社会参画・子どもの貧困・東日本大震災復興支援等、企画から担当。2013 年、大阪子どもの貧困アクショングループ(Child Poverty Action Osaka/ CPAO) を設立。2016年NPO法人化、2018年に認定NPO取得。著書『まずはごはん!』、2020年に第6回 糸賀一雄記念未来賞を受賞一児のシングルマザー

認定NPO法人CPAO(シー・パオ)
生活困窮を抱える世帯の子どもたちを中心に、親子の生活支援を行っています。「まずはごはん!」=食を通したアウトリーチでつながり、子どもと親をまるごと支える生活サポートで抱える問題を共に乗り越え、子どもたちの生活に一歩踏み込んだ暮らしのサポートをしています。

土屋春代(写真左)
㈲ネパリ・バザーロ会長、NPO法人ベルダレルネーヨ共同代表 ネパールの子どもたちの厳しい状況を知り教育支援活動を始めたが、深刻な貧困問題に直面。仕事の場を創ろうと1992年ネパリ・バザーロを創立。国内でも震災後の東北や数々の課題を抱える沖縄支援のために奔走。

伊江島の命どぅ宝の家。館長の謝花悦子さんから、沖縄がおかれた厳しい現状を聞きました。

久米島のカカオ生産者・阿嘉茂さんのハウスを訪問。実際に実っているカカオに感激。

七ツ釜製法で丁寧に黒糖を作られる西平黒糖さん。製造の様子を特別に見せて頂きました。できたての黒糖の美味しいこと!

カカオ生産者・仲地リナさんの話に耳を傾ける徳丸さん。

CPAOさんメンバーの真剣な様子に刺激され、工房スタッフも必死に伝えます。緊張感が漂っていました。

初めてのチョコレート作りに挑戦。最初の一枚の完成を、皆で喜び合いました!

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アグリ笹森さんから、2023年度産の新米が届きました!
~アグリ笹森 × CPAO × ベルダレルネーヨの米交流~

私たちNPO法人ベルダレルネーヨは、2021年より毎月48kgのお米をCPAOさんに支援させて頂いています。もちろん、アグリ笹森の皆さんが手間暇かけて栽培した美味しいお米です!CPAOの皆さんが心を込めてお料理を作り、必要な方々に届けています。陸前高田への研修の道中に奥州のアグリ笹森さんを訪ね、念願の初対面となりました!「CPAOの皆さんは初めて会った人のような感じがしなくて、何年も前からの知り合いのようでした」とアグリ笹森代表の織田義信さん。徳丸さんの気迫に勇気が湧いたそうです。関わる皆の心がこもった美味しいごはんを食べて、自分自身が大事にされていることを感じて頂けたら嬉しく思います。
皆さまも、今年の新米をぜひお味見ください!!日本の若者も、米作りも、共に守っていきましょう!

美味しいお米、たくさん食べてね~~!

認定NPO法人CPAO(シー・パオ)さんについて、ぜひHPでご覧ください!