1. ホーム
  2. > 特集
  3. > 虹色の星座が始まります! tsuna17 2020a

虹色の星座が始まります! tsuna17 2020a

虹色の星座 ~小さな光を繋ぐ未来へ~

対談 簑田理香さん × 土屋春代

沖縄カカオフレンズの仲間ね、ご紹介頂く連載が「つなぐつながる」2021年春号からスタートします。筆者の簑田さんをご紹介するため、お話を伺いました。

≪簑田理香≫
栃木県益子町在住地域編集室簑田理香事務所主宰益子地域コミュニティヒジノワcafé & space共同運営教育系出版社てフリランスとして地域づくりの事業企画・メディア制作などをう。市民活動では、映画自主上映会勉強会工芸作家とのイベントを主催したり、種子活動やシェアする農業仕組みづくりにも参画中

土屋春代≫
(有)ネパリ・バザーロ創立者、NPO法人ベルダレルネーヨ共同代表。ネパールの子どもたちの厳しい状況を知り教育支援活動を始めたが、深刻な貧困問題に直面。仕事の場を創ろうと1992年ネパリ・バザーロを起業。国内でも震災後の東北や数々の課題を抱える沖縄支援のために奔走。

陸前高田での出会い

簑田 春代さんと初めて会ったのは、陸前高田の箱根山テラスで開催されたセミナーでした。春代さんがお話に来られると聞いて、ぜひお会いしたいと思っていました。

土屋 その前からネパリ・バザーロ(以下ネパリ)のことは知っていらしたのですか?

簑田 国際協力には関心があり、何らかの形で活動はしたいと思っていて、その延長でネパリを知りました。春代さんのことも本で読んで、とても熱量のある方だと思っていたので、セミナーの後お声を掛けました。

土屋 沖縄のカカオプロジェクトの話を通して、これからの生き方を共感・共有し合え、とても嬉しく思いました。

簑田 ネパリのことをまだろくに知らないのに、ずうずうしく話かけ、研修ツアーも参加させていただきました。私は、地元の益子で仲間と地域活動や勉強会をしていますが、福島と沖縄は問題の根っこが同じと考え、2ヶ月連続で映画上映と勉強会を組みました。もっと学びたいと思っていたところに春代さんとお会いし、沖縄に一緒に行けることになり、出発前にこれまでの資料や本を引っ張り出して読み直しました。

土屋 カカオプロジェクトの話をしたときに、記録に残したいと言ってくださったのが嬉しかった。プロジェクトの立ち上げ時には、ネパールでも、野田村でも、陸前高田でも、最初はいつも一人で行くので写真が撮れず、記録が残せません。ある程度形になって同行者ができて初めて写真が増えていきます。沖縄カカオプロジェクトを初期の頃から記録していただけたらありがたいと思いました。日程が合わず残念でしたが、そういう角度からの支援の提案は初めてでした。記録に残さなければと思ってくださったのはなぜですか?

簑田 今まで学んできたこと、活動してきたことの経験から、ふたつの理由があります。ひとつは、伝承芸能・先人の知恵・食文化などを聞き取りして記録し、地域づくりや次世代に生かす取り組みを続けてきました。そこで感じるのは、日本では、先人や歴史からの学びを残す意識が薄く、切り捨てがちだということです。歴史から学び、何回もおなじ間違いをしないために、まず記録して伝えていくことが大切ですよね。

もうひとつは、2012年から地方創生の現場で働く中で、社会課題に対して安易なアイデアに予算が落とされる状況を少なからずみてきました。春代さんは現地の実情を把握しながらプロジェクトの方向性を変えていく、そこがすごいと思ったことです。ネパリの最初の動機はネパールに学校を作るという教育支援。でも貧困を解決しないと状況は変わらないことに気づき、目標設定はぶれることなく取り組み方を変更されていますよね。これから始まる沖縄プロジェクトがどういう道をたどるのか記録に残したいと思いました。

土屋 たぶんこうしたらいいのではないかという閃きが最初にあり、あとは現地に入って修正していきます。行ってみたら当然違うことがあります。現地とのずれがあれば、それが現実ですから、変えるのは自分の方です。頭を柔らかくして、自分が変わっていくと新たな気づきがあります。その時は辛かったり、傷ついたり、実力を超える目標を設定しないといけなかったりしますが、地域に合わせて学んでいく、それがおもしろい。少しずつ目標に手が届きそうになった時には大きな達成感があります。

ネパリは、生産者が自立できることを常に考えています。コーヒーをネパールで初めて産業化しましたが、それが軌道に乗り韓国のNGOから請われたときに見返りを要求せず、逆に通関手続きまで代行して生産者を譲りました。ネパリの支援が必要なくなったらいつでも引く、ゼロから創っていくフロンティアワーク、生産者を中心に考える信念、人と人とをつないでいくネットワーク…カカオプロジェクトは、ネパリがずっと大切にしてきたことの集大成です。これまでの積み重ねすべてが詰め込まれています。ネパールでの活動や東日本での震災支援からいろんなことを教えてもらい、自分たちも考えていなかった次のステップへの道が開けました。新たな活動の拠点ができたことに感謝しています。

簑田 カカオプロジェクトが集大成という意味では、ネパールでの有機栽培の取組みがインドの有機カカオにつながり、陸前高田の椿油製油工房がチョコレート工房になり、巡り巡っていますね。

土屋 椿油の工房は、もともとそのために作ったかのようにチョコレート工房になりましたが、直前まで考えてもいませんでした。沖縄ですぐにはチョコレートを作れないとなった時に途方に暮れましたが、後で思うとまるで全部最初から計画していたかのようです。工房も椿油だけでは大赤字で、継続して雇用するには製油以外の仕事を絶やさずに作らねばと苦心していました。今はチョコレートと椿油でどうにかまかなえる目途が立ち、次のフェーズを考えて人も増やしました。

簑田 工房スタッフの最初の反応はどうでしたか?

土屋 「えーーーっ!」と、びっくりしていました(笑)。でも、嬉しい驚きだったのね。皆すごく喜んでいました。チョコレートの持つ魅力でしょう。チョコレートは誰にも好かれ、プレゼントにも喜ばれます。こんな商品に出会えたことが嬉しく張り合いがあります。

沖縄を訪ねて

土屋 沖縄のフレンズツアーはいかがでしたか?

簑田 ネパリの沖縄ツアーには3回参加しました。沖縄は以前にも取材やイベントの仕事で訪れてはいましたが、基地の問題などを知るようになってからは、気軽には行けないと思うようになっていました。伊江島のヌチドゥタカラの家は行くたびに見えるものが異なり、その都度圧倒されました。次は何が見えてくるのか。沖縄には多くの課題がありますが、たとえば、レンタカーで走っていて進路変更するときに、すぐに気づいて譲ってくれるドライバーが多くて、そんな経験から、いろんな立場があり、考えの違いで対立することはあっても、包摂的なコミュニティとしての可能性を秘めていると感じました。

土屋 沖縄は権力者の弾圧と闘いの歴史があり、強いです。

簑田 もとは助け合うコミュニティなのに沖縄の人同士が分断されるのは残酷です。

土屋 私たち本土の人間の責任は重く大きく、申し訳なさがあるから沖縄に気軽に行けないという人は多くいます。沖縄の人も私たちに言いたいことがたくさんあるでしょう。沖縄でどうしたら受け入れていただけるか、行くたびにいつもドキドキしています。ビジネスでこちらが買う立場だとよけい言いたいことを言えなくなるのでは?ツアーで大勢連れて行って、数の力で圧力を感じさせていたらどうしよう…と、気を回してしまいます。受け入れていただいているとはまだまだ到底思えません。歴史を勉強し、理解しようと常に努めていますが、沖縄、福島は当事者からみたら私たちはあくまで部外者です。こちらの至らなさを指摘されて初めて気づかされることが多くあります。はっきり言ってもらえる人でありたい。一番腹立たしいのは、中途半端に知った気になっている人ではないかと思います。

簑田 沖縄でも、福島でもそうでしょうね。

土屋 行く度に気づかなかったことに気づかされ、いかに知らないかを知るために行っているのだと思います。フレンズツアーに案内役として毎回行っている私が一番、沖縄の方からも、ツアーの同行者からも学んで得しています。

コラムのスタートにむけて

土屋 簑田さんには春カタログからコラム掲載をお願いしますが、抱負をお聞かせください。

簑田 カカオプロジェクトに参加すると、カカオフレンズと呼んでもらえます。消費者ですがフレンズと呼ばれることで、迎えてもらったという嬉しさがあります。生産者と消費者ではなく、フレンズとフレンズ、いろんな形でプロジェクトに関わる方たちをつなぐ、集う場所になるコラムにしたいと考えています。

土屋 応援してくださっているフレンズが、他のフレンズの思いを知るのは心強いでしょうし、励まされますね。

簑田 自分が買うもの、食べるものを、よく考えて選択して、自分らしい暮らしをつくろうと行動している人は震災以降増えていると思います。生産者への関心も高い。そこから社会や政治への関心にもつながります。中にはそうした思いを一人で抱えて孤立している人もいるでしょう。同じ方向を見ている人が他にもいるとわかれば力になります。いろんなところで仲間の存在を感じられると嬉しいですよね。

土屋 出会えないはずの人がこのプロジェクトがきっかけで出会えて、新たな広がりがあったらすばらしいですね。フレンズツアーを2回実施しましたが、初対面でも皆価値観が共通しているので話が合い、すぐに親しくなり、ツアーが終わってからも交流が続いています。10月に行かれた方たちが感想で「わたしたちのチョコレート」と言ってくださったのがとても嬉しかった。フレンズの皆さんが、そう思ってくださったら幸せです。コラムを通してフレンズ同士のつながりを作っていってください。期待しています!

(つなぐつながる 2020秋 Vol.17より)