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虹色の星座 篠原孝子さん tsuna25 2022a

虹色の星座 ~小さな光を繋ぐ未来へ~

カカオフレンズを訪ねる 連載 第5回

名護市「カナサ」オーナー

篠原孝子さん

取材・文・写真 簑田理香

広大な宇宙に散らばる小さい点のような星でも、線で繋いで結んでいくことで夜空に大きな星座が見えてきます。沖縄カカオプロジェクトは、インド、ネパール、沖縄、東北の生産者さんたちだけではなく、全国各地のカカオフレンズの皆さんお一人おひとりの思いや願いが結ばれて、未来の姿が描かれてゆきます。フレンズの皆さんは、どんな思いで、リサチョコレートを手にしてくださっているのでしょうか。カカオフレンズのお話を伺う連載、第5回をお届けします。

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 ウチナーグチ(島言葉)に詳しくない方でも、会っておしゃべりすることを意味する「ゆんたく」は、ご存知の方も多いでしょう。今回ご登場いただく篠原さんは、2001年に当時住んでいた埼玉県から沖縄県名護市へ移住し、2021年春に「ゆんたく」スペースがあるお店をオープンしました。やんばる(沖縄島北部)の畑で採れる無農薬栽培の作物や安心安全な原材料で手作りされる加工食品、フェアトレード製品、そして篠原さんが作るおむすびやお惣菜が並びます。小さくても、土地の農と食、そして人の繋がりの豊かさに溢れたお店です。

学び、動き、つながりを育む場をつくる

 篠原さん曰く「沖縄の歴史も米軍基地のこともろくに知らず、ただ暖かいところに住みたいなあと思って」移住した翌年が、名護市長選挙の年。米軍基地の移設先としての新基地建設計画が争点になっていました。移住後すぐに「名護は一生住みたい街」と思った篠原さんは、それまで関心を持てなかった選挙にも基地問題にも関心を持つようになり、イラク戦争を止めるために米総領事館前で行われていたハンガーストライキの現場で話を聞いたこともありました。

「米軍は日本を守るために沖縄にいると漠然と思っていたけど、アフガニスタンやイラクの戦争に沖縄の基地から米軍が出撃しているという事実を突きつけられて、自分の無知さに愕然としてしまったんですよね。まず、知ることから始めようと本を読んだり勉強会に参加したり・・・」

 学ぶことは、動くことにも繋がります。2004年。辺野古に新基地建設を止めるための座り込みテントが立ち、運動が始まった時から、篠原さんも参加。午前中は辺野古、午後は市内に戻り仕事に行くという生活を続けました。次第に活動の幅が広がり、いったん仕事を辞めるという選択をします。

 「当時働いていたスーパーの店長に、こういう事情で辞めたいんですと泣きながら言ったら、本当はウチナーンチュの自分たちがやらなければいけないのに、移住したあなたに反対運動をやらせて申し訳ない。頑張っておいでと言われて。その言葉がとても嬉しかったんです」

 2018年、再び名護市長選挙が篠原さんの転機に。辺野古新基地建設に反対の立場の現職・稲嶺進さんが三千票の差で敗北という結果に・・・。

「いろいろと考えてしまいました。辺野古に来る人には今の状況を一生懸命に説明してきたけれど、名護市民の人たちと全く関わってきていないことに気づいて、まちなかに戻ろうと辺野古を離れました」

それからは、ホテルの清掃や高齢者施設の厨房の仕事を続け、月に一、二回、無農薬栽培の農家さんの畑に手伝いに通ったりしながら、いずれ、人が集う場としてアンテナショップのような店をつくりたいと考えていたそうです。

 そして今、店内には、ネパリ・バザーロの商品も並びます。ネパリ・バザーロの土屋さんに初めて会ったのは、辺野古のテント。辺野古の現状を見て話を聞きに来てくれた土屋さんから沖縄カカオプロジェクトの計画のことを聞き、「沖縄に必要なのは基地に依存しない経済をつくるための仕事づくり、産業づくりだ」と考えていた篠原さんは、一も二もなく「沖縄にとても必要なプロジェクトです!」と伝えたそうです。

 「基地に頼らざるを得ない構造が作られてきたのをすごく痛感してきて・・・。かといって、基地を受け入れたことで落とされたお金で、雇用は生み出されていますか?振興していますか?というと、そうではないんです。逆に、名護市内でも地域の人たちが、そこにある資源を活かして地域おこしをしている地域があります。例えば、勝山は、シークヮーサーとヤギと山で。その勝山を紹介した新聞記事を見て、生産者の方のお話を聞きに行ってきました。学ぶことが多かったですよ。勝山のようなところを少しずつ増やしていけばいいし、ネパリさんの沖縄カカオプロジェクトも、そうなるはずだから、みんなで支えていきたいと思います」

 お店では、初めて出会うお客さん同士でも、ゆんたくテーブルで自然と会話が始まります。本棚には、農業や安全な食、環境などの本が並び、D V Dを観るためのディスプレイも置かれています。お店の名は、カナサ。島言葉で「愛さ」と書き、「愛しい、お気に入り」という意味です。ウチナーンチュもヤマトンチュも、国境の外も中も、まずは対話。ゆんたくから生まれる、いろんな愛が生まれ、育まれてゆく場所です。

カナサ
@kanasa_takako
沖縄県名護市宮里1011
TEL:090-8293-9801
Open:9:30~18:00
Close:水木

取材・文・写真 簑田理香
栃木県益子町在住。地域編集室簑田理香事務所 主宰。

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