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ネパールから tsuna17 2020a

文・高橋 百合香

 ネパールは、3月24日から7月21日まで約4カ月間、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、ロックダウンの措置がとられていました。国内・国際線は8月31日まで全便運航停止です。8/19現在)

 ロックダウンは一旦解除されましたが、インドの感染爆発の影響を受け、インド国境沿いのタライ平野を中心に、ネパール国内でも感染者数が増えています。カトマンズ盆地にも感染が広がり、8月19日から再びロックダウンとなりました。前回よりも厳しいそうです。ネパールでは、10年に亘る内戦、武力衝突や治安悪化による外出禁止、頻発するバンダ(ストライキ)、長時間の停電、水不足、ガソリン不足、日常物資の不足と高騰、大地震や洪水などの自然災害・・・多くの社会不安が常にある状況でした。私たちはそのような状況下で仕事の機会を生み出し続けるため、都市部では、できるだけ電気を使わず、女性たちが家事や育児の合間にもできる手仕事を活かした商品開発を行ってきました。アイピローなどの雑貨や手編み製品の生産などは家でもできるので、コロナ禍でも細々と続けることができています。

 遠隔地の村々では、農薬や化学肥料を使用しない自然にそった農法にこだわり、気候風土に合った素材を活かした商品開発を行ってきました。より厳しい暮らしの農民の方々の収入向上を目指し、僅かな荒れ地でも逞しく育ち、収穫頻度の高いスパイスやハーブに、特に力を入れてきました。大農園で、単一品種を大量生産するのではなく、一軒一軒の農家が少量多品種栽培したものを、コーヒーや紅茶の長年の取り引きで培った経験と現地のネットワークを活かし、村々を回って集めています。豊かな大地を次世代に引き継げるように、森の生物多様性を守りながら、生産者も消費する私たちも、その恵みを享受してきました。

 そのような農業と対極にある近代的な、大量生産、大量消費、大量廃棄の利益至上主義の行き過ぎた経済活動を基盤にした私たちの便利な暮らしが、多様な生物の棲み処の森を破壊し、棲み処を失った野生動物が食糧を求めて人間の居住地に近づいたことも一因となり、動物から人に移るウィルスの脅威が今、私たちに襲い掛かってきています。さらに、同じく私たちの経済活動がもたらした気候危機により、動物は強いストレスを抱え、感染しやすい状態になっているそうです。

 ネパールでも日本でも、感染拡大以前から厳しい生活を強いられてきた社会的弱者の方々ほど、大きな打撃を受けています。不平等な社会の格差が、さらに助長されています。これから先、どうなってしまうのでしょう。胸がしめつけられます。私たちは、地球上全ての多様な生物の命と人々の尊厳を守るため、ライフスタイルを根本から見直すことが急務です。一人ひとりに突きつけられています。

 

タライ平野に暮らす少数民族キサン民族の奨学生サビタさんのご家族。元々厳しい生活をしいられていました。これからが心配です。

シリンゲ村でコーヒーやスパイスを栽培しているティマルシナさん一家。彼らの自然と共にある暮らしを守っていきたいと思います。

カンチャンジャンガ紅茶農園では、4月にはすでに春摘み紅茶の収穫が終わっていましたが、輸送できずにいました。ようやく届いた春摘み紅茶は、若々しく爽やかなお味です!

マハグティでは、裁断した布や糸などをスタッフがワーカーに届けて回り、彼らの収入を絶やさぬよう努力しています。特にアイピローの仕事はとても助かると、いつも感謝して下さっています!

ウールンガーデンのニッターさん。手編みの仕事は家でもできるので貴重です。ニッターさんが久しぶりに工房に集まった時には、私たちとビデオ通話をして盛り上がりました!皆さんも嬉しそうでした。

国際線運航停止の中、ネパール政府が手配した日本へのチャーター便で商品を輸出できるという連絡が入り、飛び上がりました。このチャンスを逃したら、次はいつになるか分かりません。カーゴ会社のスタッフが生産者を回って商品を集荷し、書類を整え輸出準備をします。政府機関が半日しか稼働していなかったため、直前まで輸出許可が下りずにハラハラしましたが、アンジャナさんやラクシュミさんが諦めずに頑張って下さり間に合いました!
7月15日、約4カ月ぶりにネパールから横浜事務所に商品が届きました!届いた商品を見ながら、生産者の方々のお顔が浮かびました。「大変な中作ってくれたんだなぁ」「収入が入って少しほっとしているかなぁ」「まだまだ先は不安だよなぁ」…色々な想いが巡りました。商品のバトンを受けて、今度は私たちが頑張らないと!気合も入りました。

シリンゲ村のコーヒー生産者ダッチャさん。3月頃からコーヒーの収穫が始まりましたが、ロックダウンのため町に運べずにいます。

(つなぐつながる 2020秋 Vol.17より)