虹色の星座 箕田朗子さん tsuna27 2023s
虹色の星座 小さな光を繋ぐ未来へ
カカオフレンズを訪ねる 連載 7回
障がい者ベース石巻にょっきり団
箕田朗子さん
取材・文・写真 簑田理香
広大な宇宙に散らばる小さい点のような星でも、線で繋いで結んでいくことで夜空に大きな星座が見えてきます。沖縄カカオプロジェクトは、インド、ネパール、沖縄、東北の生産者さんたちだけではなく、全国各地のカカオフレンズの皆さんお一人おひとりの思いや願いが結ばれて、未来の姿が描かれてゆきます。フレンズの皆さんは、どんな思いで、リサチョコレートを手にしてくださっているのでしょうか。カカオフレンズのお話を伺う連載、第7回をお届けします。
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宮城県石巻市に箕田朗子(みたあきこ)さんを訪ねました。駅から歩いてすぐの公共施設。一室のドアを開けると、箕田さんと車椅子の男性がテーブルを挟んで座っています。「うん、そうだね」と相槌をうつ箕田さんたちの他に、何人かの声が2人の間に置かれたタブレットから聞こえてきます。箕田さんが代表を務める「にょっきり団」の定例ミーティングが対面とオンラインを組み合わせて行われていました。
2009年頃、石巻にあったフェアトレードショップで購入されたというネパリ・バザーロの財布と。
ともに生きる地域社会の当事者として
にょっきり。口に出してみると、なんとも楽しげな明るい語感。ふだんはあまり使わない言葉ですが、辞書には「平らなところから、ものが出てくるさま」とあります。「にょっきり団には、障がいがある本人やその家族、12名の団員がいます。支援をする団体ではなく、当事者の集まりなんです」と箕田さん。当事者として、障がいがある人への理解を広める啓発活動や、行政へ要望を伝える活動などを行っています。箕田さんにいただいた団の通信には「街も僕らもこれからも、にょっきりと伸びていこう」と書かれています。
街も僕らも。そのフレーズの重みを東日本大震災の被災地・石巻で、感じながら、まずは地元への想いを伺ってみました。
「若い頃は、とにかく早く石巻を出ようと、その一心で東京の大学を選びました。映画にしても音楽にしても、自分が触れたいものが石巻には無いことが不満の素になっていて。いつも閉塞感みたいなものを感じていました」
卒業後は2年間だけ関東に残り、そろそろ故郷に戻ってみようかと、特にこれと言って進む道を決めていたわけではないまま、7年ぶりに故郷で暮らし始めました。福祉との接点は戻られてからでしょうか?
「私自身も足に少しだけ障がいがあって、大学での専攻も福祉も学べるところを選んでいました。仕事として携わるようになったのは、震災がきっかけです。道路や公共交通も破綻した状態は健常者にとっても大変なことですが、障がいがある方たちは、移動ひとつとっても想像以上の困難があります。震災後すぐに、通院や日常の買い物などの移動を支援する団体が立ち上がり、そこから声をかけてもらって働き始めました。にょっきり団も立ち上げには関わっていなくて後からの合流です」
石巻に戻ってきて、ずっと福祉が気になっていたとはいえ、当事者の方々にも支援団体にも繋がることができていなかったそうですが・・・。
「そこが震災で一気に可視化されたんです。サポートの必要な人がここにいる!こんな支援が必要!って。それに震災直後から、県外から本当に多くの人たちが石巻に入って動いてくださっていました。その様子に刺激を受けて、自分たちもやらなきゃ!とスィッチが入りました」
10年が経って前に進んだこともあれば、地域の課題がさらに見えてきたことも少なくはないと箕田さんは言います。
「施設も建物も増えてきたけど、それが市民の幸福に繋がっているかといえば、どうでしょうか。そういう目に見える『復興』にばかり気を取られて、日々の暮らしに目が行き届いていないところも多いと感じますね」
ひと口に障がいと言っても、にょっきり団にも重度の身体障がい者の方もいれば、知的障がいの方も、進行性の難病を抱えて車椅子生活が続く人も。行政の制度やサービスがあっても、それぞれの実情にあうものはなかなか無いということです。
「実は、そういう課題を考えるときに、ネパリさんの活動から学ぶことが多いんです。ネパール、震災後の福島や東北、そして、沖縄への活動を広げられて、その地域や人の実情に合わせた多様な支援の仕方が、とてもいいと思うんです。活動の様子を冊子やニュースレターで知るたびに、ああそうだと気づくことも多いです。沖縄カカオプロジェクトも夢があって、現実的でもあって、沖縄での取り組みを自分ごとのように応援したい気持ちが増してきます」
ひとごとではなく、自分ごと。そして当事者として。そのような立ち位置の取り方を、私たちも、箕田さんやお仲間の活動から学ぶことができます。
「何にしても当事者が声を上げていかないと状況を変えていくことはできないですよね。そういう思いは、年々強まっています。例えば、障がい者の移動を支援する活動も、実は、いずれは自分ごとだと思っています。高齢になって運転免許を返納したら、病院に行くにも買い物に行くにも、思うようにいかなくなります。それは誰でも同じです」
ひとごとではない。ひと任せでもない。ともに地域社会で生きる「当事者」として、私もあなたも、にょっきり伸びていきましょう。
取材・文・写真 簑田理香
栃木県益子町在住。地域編集室簑田理香事務所 主宰。