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虹色の星座 竹島真理さん tsuna31 2024s

虹色の星座 小さな光を繋ぐ未来へ

カカオフレンズを訪ねる 連載 第11回

竹島真理さん

取材・文・写真 高橋百合香

広大な宇宙に散らばる小さい点のような星でも、線で繋いで結んでいくことで夜空に大きな星座が見えてきます。沖縄カカオプロジェクトは、インド、ネパール、沖縄、東北の生産者さんたちだけではなく、全国各地のカカオフレンズの皆さんお一人おひとりの思いや願いが結ばれて、未来の姿が描かれてゆきます。フレンズの皆さんは、どんな思いで、リサチョコレートを手にしてくださっているのでしょうか。カカオフレンズのお話を伺う連載、第11回をお届けします。

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ご注文の際にお電話を頂くと、お声ですぐに分かります。映画や本、ラジオなどの情報も教えて下さり、私自身も九州出身のため近しく感じていました。ネパリ・バザーロと出会って下さったのは2006年頃。書店で見付けたカタログがきっかけでした。初めて手にされたのは「風のラップパンツ」。草木染めの青緑の「ふたえパンツ」はボロボロになるまで履かれ、それでも捨てられなくて布を取っておかれているそうです。大事にして下さって有難いです。2023年10月に、福岡県の大宰府政庁跡で初めてお会いしました。


優しい色のお着物に、ネパリ・バザーロのレース織りショールを羽織られた素敵な装い。

原点は、山と人の関わり、人々の暮らし

大分県日田市ご出身の竹島真理さん。大学卒業後、地元で新聞記者になられました。駆け出しだった1991年、大きな台風が立て続けに来て、杉やヒノキの人工林が広範囲にわたってなぎ倒されました。二次災害を防ぐために取材を続ける中で、本来の山のあり方や昔の山仕事、川仕事がテーマになっていったそうです。その後はフリーになり、漁村や農村にも行き、暮らしや共同体などの視点から取材をしてこられました。

印象的な特集記事を見せて頂きました。お母様の母校を取材された時のものです。敗戦後7年経った頃、村の大人たちが力を合わせて小学校に新しい校舎を建てた物語。山から木を伐り、運び、校舎を作ります。子どもたちは川から石集め。子どもたちのためにと、張り切る大人たちの息遣いが聴こえてくるようです。

「ひいじいちゃんが木を牛に引かせて山から出したとばい。」竹島さんの母方の祖父は、お母様が2歳の時にサイパン島で戦死されました。息子を失った悲しみに打ちひしがれていた曾祖父は、どんな気持ちで木を伐られていたのでしょうか。戦争で身を裂かれるような犠牲の上にようやく訪れた平和な世の中で、大人も子どもも明るい未来を願って学校を建てた思いを、この木造校舎から感じるそうです。

父方の祖父は、91歳で亡くなる半年前に病床で「戦争中に、日本人はむごいことをしたとざい(したんだよ)」と、支那事変に召集されて、日本の兵隊が中国の人たちを地べたに座らせて銃剣で突き刺すのを見たことや、兵隊には食事もろくに与えないのに上官は毎晩酒盛りをしていたことなどを話し、「戦争は、しちゃいかんねえ」と、かみしめるように言われたそうです。

戦争のむごさを身近に感じて育った竹島さんですが、沖縄を訪問し、糸数アブチラガマに入った時の感覚は、それまでにはない強烈なものだったと言われます。「当時のままの食器や焼け焦げて黒くなった岩肌などを見た後、懐中電灯を消して下さいと言われて。その1分間の長くて怖かったこと。隣におられる方の袖をつかみたいくらい。あの真っ暗な中のあの時間が、私に沖縄戦を教えてくれたというか。沖縄戦のほんの一端ですが、沖縄で何があったのか、戦争は絶対にダメだというのを肌で感じました。ずっと忘れられない感覚です」。同時に、沖縄に対して抱き続ける申し訳ない思いも吐露されます。「基地は絶対に反対と思っていますが、私は座り込みに行くわけでもなく、見て見ぬふりというか…私たちの日常は沖縄の方々の犠牲の上にあるんですよね…」

2021年には「沖縄カカオプロジェクト」を取材し記事にして下さり、西日本新聞にご掲載頂きました。その記事を読まれた沖縄のご友人から「私たちに共通だなと思うのは、弱い立場の人たちを応援したい気持ちと平和な未来を残したい気持ち」という手紙が届き、沖縄カカオフレンズになって下さったそうです。共感してもらえて、涙が出るほど嬉しかったと言われます。その紙面を見てカカオフレンズになって下さった方は他にも多くいらっしゃいましたし、さらに沖縄の最前線で活動されている方に私たちから記事をご紹介したところ「このような応援は、がぜんやる気が出てきます!」と嬉しいメッセージを頂いたことをお伝えしました。胸に秘めた熱いお気持ちと、それぞれの場所での行動は、きっと誰かを励まし、共感を生み、より良い社会への確かな一歩になっていると感じます。

「リサチョコレートは美味しいですし、ますます美味しくなりましたよね!」と竹島さんの嬉しいお言葉。美味しく、温かな輪を共に広げていきましょう!

取材・文・写真 ネパリ・バザーロ 高橋百合香