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虹色の星座 田嶋千由紀さん tsuna34 2024w

虹色の星座 小さな光を繋ぐ未来へ

カカオフレンズを訪ねる 連載 第15回

田嶋千由紀さん

取材・文・写真 高橋百合香

広大な宇宙に散らばる小さい点のような星でも、線で繋いで結んでいくことで夜空に大きな星座が見えてきます。沖縄カカオプロジェクトは、インド、ネパール、沖縄、東北の生産者さんたちだけではなく、全国各地のカカオフレンズの皆さんお一人おひとりの思いや願いが結ばれて、未来の姿が描かれてゆきます。フレンズの皆さんは、どんな思いで、リサチョコレートを手にしてくださっているのでしょうか。カカオフレンズのお話を伺う連載、第15回をお届けします。

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ネパールに技術指導に行って頂いた事もある、かご作家の佃真弓さんを通してネパリを知って以来23年間、商品をご愛用くださっています。お手紙を頂くこともあり、沖縄産カカオのチョコレートができる日を一緒に夢見てくださっていることが伝わってきて、勇気づけられていました。
岐阜県飛騨高山のご自宅にお伺いした日は雨が降っていました。道に迷って私たちが車でうろうろしていると、突然目の前に田嶋千由紀さんが現れました。傘をさしたまま大きな水たまりを軽やかに飛び越えて、レース織りのカーディガンがふわっと風に舞った姿は妖精のよう!初めてお会いした田嶋さんの姿に魅了されました。お話をお聞きしている時は、情熱溢れた力強い語りと共に、くるくる変わる表情やしぐさに心奪われました。


胸元にはサヌ・バイさんのブローチが揺れていました。

尊厳を大切に一人一人に向き合う

原点は、小3の時の記憶に遡ります。時は高度経済成長の真っ只中。工場の煙突から煙がモクモクと出続けている様子を見て不安になり、「あの煙、どこに行くの?」と大人に聞いたそうです。その答えは、「空のずっと向こうに行って無くなるんだよ」。その後、大気汚染による重篤な健康被害が次々と発生し、公害病が社会問題となっていきます。「ウソじゃん、大人たち!」言われたことをただ信じるのではなく、疑って、自分の目で見て考える。その時の心の叫びが、田嶋さんの土台を作ったのかもしれません。高校時代のある時、信頼していた先生が発行直後の写真集「MINAMATA」を見せてくれたそうです。その中で、水俣病患者の上村智子さんとお母さんが入浴されている写真に出会い衝撃を受けました。上村智子さんは、田嶋さんと同じ歳。また15歳で世界に被害を訴えた水俣病患者の坂本しのぶさんは生年月日まで同じと知り、もう一人の自分のように感じたそうです。子ども時代の体験と水俣で生きる人々の姿がつながり、田嶋さんにとって水俣が原点になりました。

小学校の教員となった田嶋さんは、子どもたちと一緒に水俣病について学びたいと願っていました。ようやく機会が訪れ、間違ってはいけないからと、上村智子さんの名前の読み方を出版社に確認したところ、「子どもたちの手紙などあれば届けますよ」と親切に言ってくださったそうです。まだ5年生で、学び始めたばかり。水俣病への理解は浅かったけれど、子どもたちが自分の言葉で一生懸命書いた手紙を送りました。気持ちが伝わるだろうか…心配は拭えませんでしたが、お母様がとても丁寧な温かいお返事を下さり心打たれたそうです。それから数十年。「未だ、水俣病の問題は終わっていませんね」と田嶋さん。「それどころか、様々な社会問題が噴出しています。焦りもあるけれど、軸がぶれないネパリの活動をみて、愛飲しているネパールコーヒーや商品を通して関わり続け、自分も地道に活動していきたいと思います。差別されたり排除されたりして苦しんでいる人々がいる社会を、見ないことにしない自分でいたいと思っています」。

教員として子どもたちに向き合っていた田嶋さんに転機が訪れます。最愛のお父様が亡くなり、お母様が難病を発症され、退職する決意をされました。母親の症状が少しでも和らげばと情報収集する中で、温熱刺激療法イトオテルミーに出会います。見よう見まねで毎日母親に試していたところ、1週間くらいで食欲が出て、寒気も治まり、夜もよく眠れるように。家族だけではなく、様々な不調に悩んでいる方の心身を癒すことができたらと思い、必死に学んで資格を取り、44歳の時に「ちゆき療術所」を開設しました。「情熱というか勢いだけです。だからできたんですね!自己免疫が一番活発に働く37度を目指して、熱を補ってあげるのが私の仕事」。施術して頂くと、自分の中から熱がじわっと生まれるのを感じ、心地よい温かさに包まれました。人間の尊厳や人と人の絆を大事にしている温熱刺激療法を通して、一人一人に向き合ってこられた田嶋さんの生き方が伝わってきました。

「若い人たちには、今、自分が一番いいなと思うことをやってほしいです。自分が誰かに選んでもらうのではなくて、自分がピンときたことで行動することが大事。私はそうやって生きてきました!それで、ネパリに出会いました!」