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虹色の星座 田中久美子さん tsuna31 2024s

虹色の星座 小さな光を繋ぐ未来へ

カカオフレンズを訪ねる 連載 第12回

田中久美子さん

取材・文・写真 高橋百合香

広大な宇宙に散らばる小さい点のような星でも、線で繋いで結んでいくことで夜空に大きな星座が見えてきます。沖縄カカオプロジェクトは、インド、ネパール、沖縄、東北の生産者さんたちだけではなく、全国各地のカカオフレンズの皆さんお一人おひとりの思いや願いが結ばれて、未来の姿が描かれてゆきます。フレンズの皆さんは、どんな思いで、リサチョコレートを手にしてくださっているのでしょうか。カカオフレンズのお話を伺う連載、第12回をお届けします。

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「シンプルなリサチョコレートが大好き!」と言われる田中久美子さん。ひょんなご縁から、採れたお野菜を送ってもらい、ネパリスタッフで頂いたことがありました。そのお野菜の美味しかったこと!感動しました!その後、沖縄カカオフレンズになって下さったり、ご出産の内祝いに商品をご利用下さったりと、応援のお気持ちを感じてきました。佐賀県富士町のご自宅をお訪ねしたのは2023年10月。自然素材をできるだけ活かして作られた家は心地よく、大きな窓から広がる大自然を眺めつつお話をお聞きしました。


取材時10歳、5歳、1歳の子どもたちは元気いっぱい!賑やかな声が響いていました。

循環に生かされる豊かな暮らし

田中さんの転機は栄養士の勉強をしていた学生時代。ある記事との出会いだったそうです。地球上には、木々が伐採されて単一作物が植えられ砂漠化している地域があることや、日本では食べ物が大量に捨てられているのに世界には飢餓で苦しんでいる人たちが大勢いること等が書かれていました。また、食べ放題のレストランでアルバイトをしていた時のこと。常に大量の料理が置かれ、残った物は全部捨てられてることを知りショックを受けました。そして、「今私が学ぶべきことは『栄養学』ではないのでは?」と疑問が湧いたそうです。栄養学に当てはめるために栄養素を計算し、それに合わせて旬ではない食材を遠方から取り入れることよりも、その場所で採れた季節の食材を食べる方が、循環の中で生かされて元気になれるのではないだろうか?「循環」というキーワードと共に自分が進むべき道について考えを巡らせる中で、「百姓」という生き方に強く惹かれるようになったそうです。そこで有機農業を実践している『むすび庵』の門を叩き、研修生として通うことにしました。初めての農業。鍬と鎌の違いも分からないところからのスタートです。米や季節の野菜を育て、鶏も飼って捌いて、卵も頂いて。師匠の背中を見ながら学ぶ緊張の日々は、同じ志で集まった仲間に支えられたそうです。パートナーとなる一平さんにもここで出会いました。

研修期間を終え、一平さんと百姓としての暮らしに飛び込むことになりました。ご縁があって佐賀県富士町に移住することに。若者の移住を歓迎してもらえたのが大きかったそうです。何も分からずに生活が始まり、最初に住んだ家は隙間だらけ。お箸を置くと転がるし、周りは氷点下で薪ストーブを必死に焚いても10℃にしかならず…。軒下にあるお風呂にはカエルやヘビが出てくるし。トイレに便器はなく、壺があってびっくり(笑)。初めてミニマムな暮らしを経験し、当たり前と思っていたことがどれほど有難いことか気付かされたね、と一平さんと振り返られます。何と逞しく、貴重な経験でしょう。

それから農業をしつつ、3人の子どもを産み育ててこられました。長男の心平君は妹と弟の自宅出産に立ち会い、臍の緒を切るという大役も担ったそうです。自然体で話されるご家族の雰囲気から、大自然の循環の中で私たちの命も育まれ生かされているという当たり前のことに気付かされます。

10年ぶりに自分の時間が取れるようになったと微笑まれる田中さん。「ネパリのカタログで、若い人が挑戦している姿を見てすごいなと思います。私も色々なことをやってみたいと思っていた年齢です。子育てで止まってしまいましたが、若い人のパワーは自分のパワーにもなっています」と言われます。これからどんな生き方をしていかれたいのでしょうか?「ここに立って空を見ているだけで、悩みとか色々な事がちっぽけに思えてきます。自然の癒しってすごいですよね。移住してきても忙しくて上手く休めない体質の人も多いので、この家で心地よい時間をみんなとシェアできたらなと思います。『畑倶楽部』という名の好きなことをする倶楽部とか。私たちの土地をみんなに使ってもらって、畑仕事をしたい人は好きなものを育ててもいいし、本を読みたい人は読んでいてもいい。ごはんも簡単なものを一緒に作って食べたり。寝ててもいいし、身体をほぐしたり。暮らしを共有する、そういう場を作れたらいいなと思っています」佐賀のお山に、豊かな時間が広がっています。応援しています!

取材・文・写真 ネパリ・バザーロ 高橋百合香