虹色の星座 佐藤美代さん tsuna34 2024w
虹色の星座 小さな光を繋ぐ未来へ
カカオフレンズを訪ねる 連載 第16回
佐藤美代さん
取材・文・写真 高橋百合香
広大な宇宙に散らばる小さい点のような星でも、線で繋いで結んでいくことで夜空に大きな星座が見えてきます。沖縄カカオプロジェクトは、インド、ネパール、沖縄、東北の生産者さんたちだけではなく、全国各地のカカオフレンズの皆さんお一人おひとりの思いや願いが結ばれて、未来の姿が描かれてゆきます。フレンズの皆さんは、どんな思いで、リサチョコレートを手にしてくださっているのでしょうか。カカオフレンズのお話を伺う連載、第16回をお届けします。
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「ここから眺める富士山がきれいで南アルプスも美しくって。ここに絶対に住まなきゃと思って。冬の隙間風は本当に寒いけど」と笑って言われる佐藤美代さん。山梨県北杜市にある築100年の古民家。高い天井と立派な柱、長く大事にされた家具や道具、手仕事の布小物等に目を奪われます。お訪ねしたのは2024年7月。爽やかな夏の日でした。古民家は、石川県小松市から移築。当時は東京都葛飾区にお住まいで本格的な移住はまだ先と思っていたそうですが、紹介されて見に行くと、引き取り手がいなかったら来月には解体されてしまうとのこと。こんな立派な柱の古民家にはそうそう出会えないと思い引き受けることに。大工さんに移築してもらったそうです。
ご自宅から望む山々は、本当に美しいそうです。
自分のためにも、好きなことをボランティアで。
藍染職人の方が発起人となり、この指とまれで5軒集まり「八ヶ岳体験工房あすなろ」をスタートしたのは1995年夏。八ヶ岳の森を背にして、前方には富士山や南アルプスを望み、陶芸や吹きガラス、たて笛などの制作体験や自然ガイドなどが楽しめる5つの工房からなる小さな村。佐藤さんは「陶房すぎな」として、趣味で続けていた陶芸体験を提供し、物ではなく、体験を求めて、週末は多くの人達で賑わっていたそうです。子どもから大人まで、楽しく賑やかな様子が目に浮かびました。
佐藤さんは、オープン当時は東京で在職中。お母様の介護をされながら、仕事、子育て、陶芸体験と奮闘される日々を経て、時機が巡り本格的にご夫婦で山梨に移住されたのは2000年。その後、障がいがあったお兄様ご夫婦も見送られます。「人生、予定通りにはいかないけどね、その後は何かもらったお釣りの人生だと思っていて。お手伝いくらいしかできないけれど、色々なボランティアができたらいいなと思って、あっという間に30年がたちました」と軽やかに話される佐藤さん。被害者支援センターでの電話相談、視覚障がいの方のための音訳、この地で住み続けるためのネットワーク作りをして手作りのお弁当を週1回配る等の活動をされてきたそうです。ネパールのストリートチルドレンの教育支援にも関わり、ネパールにも行かれました。
被害者支援センターでの電話相談について、詳しくお聞きしました。様々な被害に遭われた方からの電話相談の中には、DVや性犯罪の被害にあった女性たちの話を聴くこともあるそうです。二次被害にならないように、一言一言慎重に言葉を選んで、相手の希望を聞き取りながら相談にのります。裁判でどのように支えていくかも大切なので、法律の知識も必要です。お気持ちを聴くだけでは済まされません。「とても大変な思いをされているので、それに対する共感を本当に持ち切れるかという鍛錬も必要です。気持ちを持ち続けるためにも定期的な研修を受けてきました」という言葉から、寄り添うとはどういうことか、覚悟を感じました。
お母様のご実家は酪農をされていたそうです。生き物と共にある仕事、365日、1日も休める日はありませんでした。「どれだけの人の働きがあって、食物が手元に届いているのかよく分かります。一生懸命良い物を生産している方の働きがきちんと報われて、真っ当に生きていけるような社会にしていかなければ私たちの暮らしは成り立っていきませんよね。生協は、価格は一般市場よりは高めでも、不作の時も採れ過ぎた時も価格のアップダウンを最小限に抑えるようにしています。作り手にとっても食べる私たちにとっても良い仕組みだなと思っています。この地域でも若い人が頑張っているので、買い支えて、育てていかないと」。
〝生活協同組合パルシステム山梨・長野〟会員の佐藤さん。パルシステムを通してネパリ・バザーロのカタログが届き、沖縄カカオフレンズになって下さいました。「本物のチョコレートを食べられて嬉しいなと思います。今は一般的に売られているチョコレートに慣れているから、本物の味が分からないですよね。このような仕組みと、本物のチョコレートが少しずつ定着したら良いなと思います」。
様々なことにボランティアで関わられながら、気負いなくさらっとおっしゃる佐藤さんの生き方に触れ、助け合い、支え合うお気持ちは、自分自身を大切にすることにもつながっていることを感じました。