紅茶農園を訪ねて vol.1 tsuna39 2026s
人が人らしく生きるために
紅茶農園を訪ねて vol.1
文・高橋百合香

2025年12月、6年ぶりにカンチャンジャンガ紅茶農園(KTE)があるフィディムを丑久保完二さんと訪ねました。冬なので紅茶はオフシーズンですが、オレンジが最盛期。村のあちこちにオレンジがたわわに実っていました。村を歩いていると、皆さんがもぎたてのオレンジを下さいます。皮からも果汁が飛び散るほどジューシーで、爽やかな甘味が最高です。ビタミンCや食物繊維が豊富で血流を促し体を温めてくれるオレンジは、村人たちにとって貴重な果物。このオレンジの皮を私たちの製品「オレンジ&ジンジャー」に使用しています。
オレンジピール製造中の工場には甘酸っぱい香りが充満し、女性たちが手際よく皮をむいていました。その後、手動の小型機械で皮を1cm四方にカットし乾燥機にかけます。寒い時期の作業は体に堪えますが、中の果肉は女性たちへのプレゼント。仕事が終わると、オレンジがたくさん詰まった重い袋を嬉しそうに持ち帰っていました。一緒にご自宅に伺うとご家族も満面の笑み。たくさん食べてくださいね!
今回のKTE訪問の一番の目的は、長年続けてきた専門教育支援の成果を評価し、今後の方向性を見極めることでした。村では進学先が限られているので、医療や農業、化学など専門分野を学ぶためには村を出て離れた町に下宿し進学することになり、必然的に近隣で就職するケースが多くなります。職種によっては村よりも町で働いた方が経験を積めることも事実です。また、卒業後間もなく親からお見合いをすすめられ、断れずに結婚、出産、育児と続き、自立の機会が遠のいてしまう女性たちも少なくありません。ネパール社会の伝統的な価値観の中で新しい生き方を選ぶ困難さも分かりますし、一人ひとりの人生なので個々の選択を尊重し見守ってきました。しかし私たちの奨学金支援は次世代の育成による地域全体の活性化を目指しているため、いつかは村に戻って貢献してほしいと願ってきました。専門教育支援を始めて18年が経ち、それぞれに紆余曲折ありながらも自分の意志で村に戻り、農業、獣医、医療、銀行、地方の政府機関などで働く若者がここ数年徐々に増えてきました。ようやく機が熟してきたと感じ、訪問を計画しました。
大変な強行スケジュールだった上に、極寒のカンチャンジャンガ。一人に会いに行くのにもジープで一山、二山越えて…という距離なので、実際に会えた若者は限られていました。しかし子どもだった初期の奨学生は30代になり、誇らしそうに働く姿に感動しました。その成長に驚くとともに、社会の中核となりつつあることを実感し頼もしく感じました。長く続けてきたからこその成果に心底励まされました。皆さまのあたたかなご支援のお陰です。
今号では、現在の奨学生と候補生の様子、次号では卒業生の様子と、2回に分けてご報告させて頂きます。

サンシラ・ネンマンさん
生まれ育った村には道がなく、雨が降るとすぐに土砂崩れとなり孤立してしまう環境で、将来は村に道を作りたいと子どもの頃から思っていました。私たちの奨学金で土木のジュニアコースと高専を卒業後、大変優秀だったため政府からの奨学金を得て大学に進学しています。数か月前、土木会社が実家近くに道を作る工事を始めたそうです。サンシラさんは「地形を考えたら不適切な計画では?」と不安を感じたそうですが、何も言えず道は完成。2ヵ月後の大雨で壊れてしまったそうです。ネパールではよくあることと唇を噛みます。道を必要としている人たちの役に立ちたいというサンシラさん。きっと夢を叶えることでしょう!

ニシャ・アチャルヤさん
農業を学び、政府系農業事業を担うNGOの現地プロジェクトスタッフとして仕事を始めて1年。政府が力を入れている果物の栽培農家を回ってアドバイスをし、情報収集・管理することが役割です。事務所を訪ねると、ニシャさんはパソコンに向かって真剣に作業をしていました。上司から頑張っていると評価されて誇らしそう。向上心のあるニシャさんは仕事を続けながら、知識を深めるため進学することになりました。地元の農業に専門職として携わる女性の誕生には大きな意義があります。いつか一緒に仕事ができたらと夢が膨らみました。姉のビマラさんも元奨学生で、現在はフィディムの銀行で働いています。家では重労働を女性が担い、勉強する時間も場所もない中で、二人とも未来を切り拓こうと切磋琢磨し努力してきました。


スリジャナ・バッタライさん
「小学一年生から支援してもらい言葉にならないほど感謝しています。自分も社会に貢献していきたいです。私の原点です」と、頻繁に村に通い奨学金支援を担ってきた完二さんをまっすぐ見て話されました。ネパール国内に仕事がなく多くの若者が国外に出稼ぎに行かざるを得ない現状、残された高齢者の方々の生活不安、アルバイト先で感じた労働に関わる人たちの極度のストレスなど、様々な社会問題の解決につながるようなビジネスをいつか立ち上げたいと言われます。スリジャナさんからは、弱い立場の人の気持ちを自分事のように受け止め、何とかしたいと考えていることが伝わってきます。複雑な家庭環境で育っていることも関わっているのかもしれません。もっとたくさん話をしたいと思いました。

次期奨学生
「女性でも自分が望む生き方を選ぶことは可能です。自分の意志で選択して、道を切り拓いてほしい。そのためにも一生懸命勉強してください。日本でたくさんの人が応援しています!」と伝えました。厳しい環境で生きる若者たちにとって、どう生きるか自分で選ぶということは想像すらできないことだったかもしれません。明らかに表情が変わり、聞き漏らすまいと必死に耳を傾けてくれていることが伝わってきました。

KTEの子どもたちの基礎教育支援
2002年に幼稚園から高校卒業まで全員が学校に行ける仕組みを作り、13年間支援してきました。毎年150~200人の子どもたちが教育の機会を得ることができました。2015年度からKTEが続けています。
専門教育支援
KTEのSLC(高校卒業資格)合格後の子どもたちを中心とする高等教育、職業支援として、2007年に始めた仕組みです。運営はNPO法人ベルダレルネーヨ主体で実施しています。
カンチャンジャンガ紅茶農園から届いた「テトラティーバッグ 手摘みのお茶・オレンジ&ジンジャーブレンド」
オレンジピール、レモングラス、ジンジャーのブレンドティー。ほのかな甘みのオレンジピールと爽やかなレモングラスに、やわらかな風味のジンジャーが効いて体ポカポカ。シトラス系の香りでリラックス&リフレッシュ。飲みやすくて美味しいノンカフェインのハーブティー。ご注文はこちらから。ネパールに想いを馳せて、お召し上がり頂けましたら幸いです。

