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ピュールさんとつくったクーネ tsuna35 2025s

開発から12年 大人気コスメ・クーネ物語

文・土屋春代


クーネはエスペラント語で「共に」という意味です。商品はこちらから。

東日本大震災支援の開始
ネパリ・バザーロはスタッフの実家が岩手県釜石市の海近くにあり大規模被災したため2011年3月27日、全線復旧開通したばかりの東北道を使い釜石に向かいました。最初に釜石の避難所での炊き出しと物資支援、被災建物でしのぐ被災者たちへの物資支援をしました。そのまま南下してお客様の安否確認と物資支援をしながら大槌、気仙沼、石巻、東松島、亘理を回り各地の惨状を見て継続支援を決めました。

戻って直ぐに準備を開始すると呼びかけに応じて全国から寄付金が集まり、共に行動する心強い企業の応援も得られ毎週のように東北に通う生活が始まりました。支援は緊急支援に始まり生活再建の応援、仕事づくりへと、その時々のニーズに合わせて内容を変えました。岩手県陸前高田市では地域伝統の椿油の搾油所をつくり仮設住宅などで暮らす女性たちの働く場として経営してきました。同じく岩手県の野田村では特産品の山葡萄の販路開拓のためワイナリー開設を提案しサポート会員制度をつくり支援してきました。

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東日本大震災
2011年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震およびこれに伴う福島第一原子力発電所事故(放射能汚染)による大規模な地震災害(震災)である。東日本各地での大きな揺れや大津波・火災などにより、東北地方を中心に12都道府県で2万2325名の死者・行方不明者が発生した(震災関連死を含む)。これは明治以降の日本の地震被害としては関東大震災、明治三陸地震に次ぐ被害規模である(災害関連死を除いた比較)。ウィキペディアより引用
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ネパリがコスメをつくったわけ
椿油の製造は震災後に福祉作業所を立ち上げようとする方たちの支援の一環で、利用者の皆さんの作業として一人ひとりの障がいに合わせて誰もが楽しく作業できるように工房を設計し、搾油したりビン詰めしたりする機械や道具を選びました。建物も機材も整っていざ開業という時に突然、前提が変わり被災者の一般就労の場として自社事業で経営することになってしまいました。

ほとんど手作業で手間がかかり効率が悪く、高い原料と人件費で大赤字となり、ネパリ・バザーロの経営を危うくするものとなりました。作れば作るほど赤字になる椿油ですが、熱を加えず圧力だけで搾り化学的な加工を一切しない天然そのもの、搾りたての椿ジュースのような油は食品としてこれほど安全安心なものは有りません。それは守りたい。しかし、椿油だけでは事業の持続ができません。何か別の商品を考えなくてはと追い詰められた時、思い浮かんだのは昔から髪を健康に保ち美しい艶を出す髪油として、肌の保湿成分として重用されてきた椿油の歴史です。

コスメに最適な原料なのだからコスメをつくろう、椿油だけでなく、他の被災地の特産品でコスメ原料になるものも入れてつくろうと思いました。


手作業で殻や不良部分を取り除き、非加熱で圧搾した椿油はうっとりするほどの美しさ。

ピュールさんとの出会い
コスメを製造するには薬機法の製造免許が必要です。取得は金額的にも時間的にも我々にはとても厳しく、また免許が取れたとしても製造施設と機材に多額の資金が必要で、知識も技術も一朝一夕には身につきません。そこでOEM(製造委託)でネパリのオリジナルコスメをつくる計画を立てました。

日本には化粧品製造所が小規模製造所含め約7千社(2012年末時点)もあり、自然派、無添加をうたう企業もたくさんあります。私たちのつくりたいコスメを使いたい原材料でつくってくれるところは何社かあるだろうと甘く考えていました。

本で調べたり、ネットで検索したり、ここはと思うところに片っ端からあたりました。しかし、持込み原料が多すぎる、指定原料が厳しすぎるとあっさり断られ、或いは丁寧に化粧品製造の仕組みを説明し無理なことだと教えてくださる会社の親切は有難くとも絶望感に打ちのめされました。いつも先ず行動してしまう自分を呪いながら候補リストを眺めるとまだあたっていない会社が1社ありました。散々断られたので、どうせだめだろうと思いつつ、大袈裟でなく最後の望みをかけて福岡県糸島市の株式会社ピュールさんに電話しました。営業担当者に事情を説明し、作りたいコスメのイメージを伝えるとあっさり「いいですよ。来週、東京に出張しますから寄りますね」と、言われました。「えっ?本当に?」。しかし、あまりにも小さい会社でコスメに関してもド素人と分かったら呆れて帰られてしまうのではないかと心配でした。ところが話は順調に進んでホッとしました。何回も試作を重ねて2013年秋、クーネはデビューしました。

宣伝費をかけられないので、多くの方に知っていただく機会と思い、2016年、東京で開かれた国際化粧品展に思い切って出展してみました。パネルで紹介したのは自慢の生産者の皆さん。米エタノールの原料米の奥州市のアグリ笹森さん、椿の実を手の平に載せて嬉しそうな笑顔は陸前高田市広田半島の女性、皆さん後期高齢者です。展示した素材も稲穂や椿の実など地味で、およそ化粧品展示会には不似合いなブースです。明るく華やかな彩りで美しい女性モデルの写真で飾られた化粧品ブースが並ぶ中で私たちのブースは素通りされてしまうかと思いましたが、常に人が集まり賑わいました。説明も熱心に聴かれる方がほとんどで張り切って説明しますが、結局価格で折り合わず、利益が少ないねとがっかりされ「この質とコンセプトならもっと高く設定できるのに」と言われ、商談不成立。それでも、大手流通から専門店まで幅広く、プロの方達に高く評価していただけたことは自信になりました。ここまでの素晴らしいコスメを創り上げたのだから、背景と品質を丁寧にお伝えし、お客様を信じて焦らずゆっくり広げていこうと決心しました。


国際化粧品展の展示ブース。慣れない場でしたが、生産者の笑顔に見守られて大盛況。

クーネ実現には厳しい壁が!
乗り越えられたのは中原さんの存在があったから
コスメを作るのは初めてで、どう依頼してよいか分からず、一番規準の厳しい取引先をターゲットにし、そこに受け入れられるようにと理想を掲げつつ、素材どうしの相性など微妙で複雑な試作過程を何も分かっていない私と試作する研究室の専門職の方達の間をつないでくださったのはOEM担当の中原ひろみさんでした。

ほとんど電話とメールでのやり取りでしたが、電話のお声と独特の間合いにいつも癒され救われました。私の何回ものダメ出しと要求に研究室の方がすごく怒っていると聞かされた時「どのくらい怒っていますか?ちゃぶだいがえしくらい?」と恐る恐る聞くと、「そう、それくらいですね~」という答え。「もうこれ以上は諦めなくてはなりませんね」と言った時「諦めないでくださ~い!頑張りましょう!」と、言ってくださった中原さんの声と言葉の抑揚は今でもはっきり耳に残っています。

期待以上、思い描いていた以上のクーネができたのは中原さんの支えがあったからでした。

2024年9月末、久しぶりに糸島のピュールさんに伺い
工場内部や製造過程を見せていただき、詳しいお話をお聞きしました。
中原さんに開発当時からの想いを伺いました。

土屋:ピュールさんはなぜクーネ製造を引き受けてくださったのでしょう?
中原:地震の時、ピュールでは利尻ヘアカラートリートメントが売れ始めていた時でした。さぁ頑張るんだ!という時に震災が起き運搬ルートも止まり配送できない、お客さまとの連絡がとれないなど大混乱でした。遠く離れた所で起きた出来事でしたが何かできないかと思いながらもCMを自粛したり寄付をするくらいしかできずにいました。
私は通販事業部からOEM部への異動となり、お客さまの化粧品づくりのお手伝いをさせていただくことになりました。土屋さんからお電話をいただき、糸島の田舎までわざわざ来てくださるという事でお話を伺い、化粧品を作りたい熱意が伝わりました。持ち込み原料全てが支援の為ということでしたので、何とか形にしたいという思いは私もありました。ネパリさんのお手伝いをすることで社会の役に立てることが嬉しかったのです。
土屋:素人の無理難題、実現が難しくご苦労されたと思いますが。
中原:肌への刺激を懸念され試作を繰り返し、防腐剤についてもなるべく植物由来でとのご要望でした。ピュールは元々前社長が肌が敏感でなかなか合う化粧品がなく、それなら自分で作ってしまおう!というところからつくられた会社です。肌に優しい処方でというお気持ちは開発者も十分理解できておりましたので、何とか形にできたと思います。また、ネパリ・バザーロという会社、スタッフの皆さんの温かさ、ネパリさんとお客様との信頼関係に助けられ励まされた気がします。
商品作りをするにあたり心がけているのはお客様のご要望に添ったものを形にする、無理な要望だとしても、別の方法、別の切り口でなるべく要望に寄り添うことを心がけています。商品を作るのは簡単ですが、そこから売るというのが大変。売り手の納得、自信がもてる商品でないと良さを伝えることができません。
土屋:製造上、特に注意されていることを教えてください。
中原:ネパリさんの場合はなるべく植物由来の原料で作って欲しいとのことでしたので、原料情報を確認し、原料自体に使用されている防腐剤にいたるまで調べて処方を組んでいます。
また、今日液体で充填したバームは常温では固体です。製造して菌検査をするまでバームが固まったままの為、溶かしてから充填します。固体の複数の油をきれいに溶かしきり、更に容器に入れて固まる時も一部の油だけが先に固まってしまわないよう温度管理が重要になってきます。バームは手ざわり、のび、使用感の良さにこだわり作っています。
土屋:クーネ製造場面を見せていただき感激しました。皆さん、楽しそうに作業していらっしゃるのがとても嬉しかったです。
中原:クーネシリーズは見ていてすごくかわいい。色数を多く使わずにデザインで工夫をすればこんなにも魅力的になるんだと感激しました。パッケージがかわいいと作業をしていても楽しいです。
お客さまのお喜びのお声も届けていただきとても嬉しいです。やりがいがあります。
10年以上も愛され続けているのは商品力もありますが、ネパリさんのお客様に対する愛情、ネパリさんに対するお客様の信頼、そして、ネパリさんを通して社会のお役に立てればという私たち含め皆さまの想いがあるからだと思います。


開発時の思い出に話が弾む中原さん(右)と土屋(左)。


製造現場を丁寧にご説明くださる中原さん。

訪問を終えて
見たかった工程を全て見せていただき細部に至るまで納得の説明を受けました。実際に製造に携わる皆さんの丁寧な仕事に、つくる製品への責任と誇りを感じました。

OEMで生産される他社製品がたくさん並べられている打合せ室の棚で「クーネ」はすぐに分かり「うちの子たちだ!可愛い!」とテンションがあがりっぱなし、最初から最後までニコニコの取材でした。

どこも引き受けてくれなかったクーネを唯一引き受け、高品質で愛され、リピーターの多い製品にしてくださるピュールの皆さま、ネパリを応援してくださる皆さま、買い支えてくださるクーネファンの皆さま、本当にありがとうございます!


明るく気持ちよいスタッフの皆さんと。ピュールさんもクーネを可愛がってくださっています。

ピュールさんスタッフの方々より
12月にピュールさんで行われた勉強会で中原さんがネパリの活動についてスタッフの皆さんにお話をされ、熱い想いがつまったたくさんの感想を送ってくださいました。作る人、売る人の想いがつながり、買う人、使う人に伝わり、みんなの笑顔の輪ができますように!

★ネパールの女性の自立支援や災害支援など幅広い取り組みに驚きました。私たちも少なからず関わっていることが誇らしく思えました。一時的な支援にとどまらず長期的に見て支援している事に買い物という身近な事で私たちもつながっているんだと思いました。
★世の中には自分達が想像も出来ない世界に住んでいる方々が多くいらっしゃるという事を知るきっかけにもなりました。自分も何か出来ることがあるかもしれない。世の中の少しでも役に立つ人間になりたいと感じました。
★ネパールから始まって能登や沖縄、色々な場所がつながり協力しあう事で子ども達の未来を豊かにしていけてると感じました。
★人が人らしく生きられる未来をつくる!これがあたり前の世界がくるように行動するきっかけになりました。普段の買い物でも考えながらしなければと思いました。
★今を生きている人が互いに尊重しあう考え方と行動力がとても心に残りました。自分自身が貧しい国や被害があった地域に直接何か出来ていないけれど、化粧品を製造する過程を通して少しでも関わることが出来ていることを感じることができました。
★見学の時、商品を見られて「かわいい」と笑顔で言われてて嬉しかった。すごく商品に愛着をもたれてるんだなと思いました。
★お客様に届く商品には検品ミス等がないよう丁寧に注意深く仕事をするように意識しておりますが、ネパリ・バザーロさんの熱い思いを知ると想いの実現のためにもより一層情熱を持って仕事に取り組まなければと思いました。


スタッフの方々に見守られながらバームが生まれる現場に感動!


ラベルは商品の顔。心を込めて貼ってくださっています。


バームはこちらからご覧頂けます!

クーネはやさしい使い心地。ご家族で使えます。
◎硫酸系界面活性剤不使用
◎鉱物油不使用
◎合成着色料不使用
◎合成香料不使用
◎石油系増粘剤不使用
◎パラベン不使用
◎フェノキシエタノール不使用
◎シリコーン不使用
クーネ化粧品は、基本的に植物のもつ様々な効果を利用して作っています。お肌へのやさしさにこだわった天然由来の防腐剤です。そのため、開封後は保管場所やご使用状況などの影響を受けやすく、高温や直射日光を避けて保管し、なるべくお早目にご使用ください。また、使用済みボトルに詰め替えることで雑菌の繁殖の原因になる可能性があり、詰め替え用の販売が難しいこと、ご理解頂けましたら幸いです。