スパイスクミンプロジェクト tsuna31 2024s
有機栽培の習得と収入向上に向けた取組み
文・丑久保完二
写真中央がラジクマールさん。クミン栽培に挑戦している女性たちと。
2023年初め、クミンの市場価格が驚くほど高騰しました。そこで、ネパールではほとんど栽培されなくなってしまったクミンを栽培することにより、農民の収入向上と有機栽培の学び、消費者にとっては妥当な市場価格で入手できることを目標に、このプロジェクトは始まりました。
プロジェクトを遂行するには、人材と土地が必要です。それを可能にしてくれた背景に、ラジクマールさんの存在がありました。現シリンゲ協同組合の代表で、次世代を担う若きホープです。又、クミン栽培には、暑く、水が豊富で豊かな土壌と、農民の協力が不可欠です。長年お付き合いしてきたハンディクラフトの生産者「マヌシ」が将来を考えスパイス事業を立ち上げたので、一緒に進めることになりました。農民が有機栽培の経験を積むことができ、更に新しい技術の習得や相談もできるということで、お互いの目的が一致しました。
この1年は適地を見極めるための試験栽培を行ってきましたが、順調に成長しています。皆さまの食卓にこのスパイスがお届けできる日を楽しみに、活動を進めています!
◇ラジクマールさんは現在30歳。農村部の農業高校で教えています。初めて出会ったのは彼が14歳の時でした。村人たちのため、ネパリ・バザーロがシリンゲ協同組合の設立とコーヒーの有機認証JAS取得の支援を始めた頃からのお付き合いです。私がシリンゲ村を訪問すると、どこへ行くにも興味があるようで、常に付いてきた少年でした。その活動を通じて、農業学校ではまず教えていない有機栽培の知識を蓄積しました。彼の情熱に心を打たれ、農業専門学校への奨学金支援をしました。卒業後も努力をし、村人たちの理解も得て、2023年から協同組合の代表を務めています。
シリンゲ村にて。左からラジクマールさん、ユブラジさん、丑久保完二。
◇「マヌシ」は、商品を生産・販売する会社組織と、技術支援や研修などを行うNGO部門、そして女性たちに小規模ローンを貸し付け、小さなビジネスを支援するマイクロクレジット部門から成っています。このプロジェクトはマイクロクレジットの女性たちを対象にすることになりました。マヌシは、女性たちに主旨を伝えて参加を募り、チトワンとナワルパラシの2つの地域から、それぞれ10家族を選びました。ラジクマールさんを講師に迎えて土壌テスト、有機栽培の講習、畑作り、種まきを行って来ました。
◇農家の方々は、普段困ったことがあっても相談する相手がいなかったので、ラジクマールさんを中心にしたこの活動はとても喜ばれています。「農作物のお医者さんのようだ」と感想を話してくれました。教師の仕事の傍ら、休む暇なくフィールドに足を運んでいるラジクマールさん。有機栽培の知識と経験は、女性たちにとってはもちろん、ネパールの農業に貢献していけるものと思います。