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スパイスのおいしさの秘密 verda31

地域開発 人が人らしく生きるために

スパイス取引からみえてくるもの

文・ネパリ・バザーロ副会長 丑久保完二

町から遠く離れ、生活のとても厳しい農村部の収入向上と環境保護に役立つ非木材生産物として、スパイスは大切なアイテムです。植えてから収穫までの期間が数ヶ月と短いため、投資負担がわずかですみ、収穫まで数年を要する紅茶やコーヒーを栽培することができない厳しい状況にある農民にとって、スパイスの市場が見つかれば、かなりの生活改善が見込めます。しかし、対象となる地域や人々が増えるほどに、人々の生活も事情も様々で、状況把握にも時間がかかります。遠い外国の市場のことや必要となる条件など、農民の理解を得るのも大変です。まだまだ長い道のりの途中ではあるものの、皆様と共に旅してみたいと思います。

ネパールの有機農業の動き
私たちが扱うスパイスは、東は紅茶、西はコーヒーで培った有機農業がベースになっています。2009年、オーソドックス紅茶委員会(HIMCOOP NEPAL)が地球温暖化への影響を減らすために、炭酸ガス放出量削減に向けた動きに合わせて、人権と環境改善に対する行動規範を制定し、紅茶の更なる質の向上を目指すことを発表しました。コーヒーも、ネパールでは、そのすべてを有機栽培に切り替える方向で紅茶コーヒー委員会がイニシアティブを取ることになり、動きが活発になっています。
この流れは、実は、約18年に亘る東西ネパールでの私たちの活動と密接に関連しています。東はカンチャンジャンガ紅茶農園(KTE)、そこに於ける有機農業の実践と成功が、西はグルミ協同組合の有機コーヒーの実践と成功が現在の動きを導き支えているからです。市場が見つからず苦労したこと、農民との意識の大きなズレなど、ここに至るまでの道はとても険しく厳しいものでしたが、常に勇気づけ、進むべき方向のヒントを与えてくれたのは、ネパールと日本で共に考え、行動し、支えてくれた人々でした。

スパイスを流通にのせるための課題
スパイス栽培の取り組みは、これら紅茶、コーヒーの有機農法の動きを背景に実現してきました。しかし、紅茶、コーヒーとは違い、スパイスは種類も多く、また、収穫時のものと最終商品になったものとは形も質も大きく違うように、工程も複雑で手がかかります。それだけ商品化への道のりも困難なものでしたが、その実現を可能にしたのは、長い年月をかけて構築してきた有機農業を実践するノウハウと人間関係でした。
工程が複雑なため異なる組織間の協働を必要とすることも、作業を難しくしている理由の一つです。日本に住む私たちの感覚では、ビジネスのためにお互いに得意とする分野で契約し、協力し合えば良いと思います。しかし、ネパールでは民族やカーストの異なる組織間での協働はとても難しく、ネパリ・バザーロは仲介役、調整役として接着剤のような役割を果たしています。収穫、運搬、加工、出荷がうまく進まなければなりません。スパイスは、この加工までの部分を主に4つの団体の協働で行っていますが、今回は、特に、東ネパール地域に焦点を当ててご紹介します。
東側から購入しているスパイスは、コリアンダー、シナモン、ベイリーフ、カルダモン、ジンジャーで、ブラックペッパーは準備中です。7つのグループから集められたスパイスをKTEが管理しています。スパイスは、生活直結の必需品でもあり、経済的に脆くて社会情勢が悪いネパールでは、市場の値段が激しく上下しています。ネパリ・バザーロは市場価格には左右されず一定の価格で買取りを約束していますが、市場の値段が高騰すると他に売ってしまい、安くなって困った時だけ買って欲しいという生産者も多くいます。市場価格に振り回されず長期的な視野で共に協力して生活を改善していこうという趣旨を理解してもらうには時間がかかります。市場価格がどうであろうと、がんばって協力してくれる人もいますが、スパイスは種類が多いので、必要な量を集めるのは常に苦労が伴います。

ネパールの有機農業の動き
私たちが扱うスパイスは、東は紅茶、西はコーヒーで培った有機農業がベースになっています。2009年、オーソドックス紅茶委員会(HIMCOOP NEPAL)が地球温暖化への影響を減らすために、炭酸ガス放出量削減に向けた動きに合わせて、人権と環境改善に対する行動規範を制定し、紅茶の更なる質の向上を目指すことを発表しました。コーヒーも、ネパールでは、そのすべてを有機栽培に切り替える方向で紅茶コーヒー委員会がイニシアティブを取ることになり、動きが活発になっています。
この流れは、実は、約18年に亘る東西ネパールでの私たちの活動と密接に関連しています。東はカンチャンジャンガ紅茶農園(KTE)、そこに於ける有機農業の実践と成功が、西はグルミ協同組合の有機コーヒーの実践と成功が現在の動きを導き支えているからです。市場が見つからず苦労したこと、農民との意識の大きなズレなど、ここに至るまでの道はとても険しく厳しいものでしたが、常に勇気づけ、進むべき方向のヒントを与えてくれたのは、ネパールと日本で共に考え、行動し、支えてくれた人々でした。

(ビンロウジュの幹に巻きつき自生するブラックペッパーのつる)

(ブラックペッパーを手に持つディリー・ラムカティワダさん)

スパイスを流通にのせるための課題
スパイス栽培の取り組みは、これら紅茶、コーヒーの有機農法の動きを背景に実現してきました。しかし、紅茶、コーヒーとは違い、スパイスは種類も多く、また、収穫時のものと最終商品になったものとは形も質も大きく違うように、工程も複雑で手がかかります。それだけ商品化への道のりも困難なものでしたが、その実現を可能にしたのは、長い年月をかけて構築してきた有機農業を実践するノウハウと人間関係でした。
工程が複雑なため異なる組織間の協働を必要とすることも、作業を難しくしている理由の一つです。日本に住む私たちの感覚では、ビジネスのためにお互いに得意とする分野で契約し、協力し合えば良いと思います。しかし、ネパールでは民族やカーストの異なる組織間での協働はとても難しく、ネパリ・バザーロは仲介役、調整役として接着剤のような役割を果たしています。収穫、運搬、加工、出荷がうまく進まなければなりません。スパイスは、この加工までの部分を主に4つの団体の協働で行っていますが、今回は、特に、東ネパール地域に焦点を当ててご紹介します。
東側から購入しているスパイスは、コリアンダー、シナモン、ベイリーフ、カルダモン、ジンジャーで、ブラックペッパーは準備中です。7つのグループから集められたスパイスをKTEが管理しています。スパイスは、生活直結の必需品でもあり、経済的に脆くて社会情勢が悪いネパールでは、市場の値段が激しく上下しています。ネパリ・バザーロは市場価格には左右されず一定の価格で買取りを約束していますが、市場の値段が高騰すると他に売ってしまい、安くなって困った時だけ買って欲しいという生産者も多くいます。市場価格に振り回されず長期的な視野で共に協力して生活を改善していこうという趣旨を理解してもらうには時間がかかります。市場価格がどうであろうと、がんばって協力してくれる人もいますが、スパイスは種類が多いので、必要な量を集めるのは常に苦労が伴います。

コーヒーや紅茶のように植えてから収穫まで数年かかってしまう作物では取り組むことの難しい、より困窮している農家の収入向上のために始めたスパイス輸入です。ところが、コーヒーのように一つの種類で量が多ければ、安定した供給も可能ですが、私たちの現在の扱い量では、信頼関係もまだ強固ではないことを考えると、全てが計画通りに進むにはまだ数年はかかりそうです。しかし、市場は待ってくれず、品質は維持しなければならず、供給安定化のための施策として、1年間の必要量を推定し、東と西に種類と量を割り振って細かく調整をしてきたため、実際には供給面で問題はでてきませんでした。今後、市場が拡大していくことを考えると、協力してくれる農家を増やし安定供給ができるようにしたいと思っています。
このような状況下では対策として、ある程度の自力生産が必要と考え、スパイスを集める役割担当のKTEもジンジャー、ターメリック、カルダモン、チリとガーリックの栽培を少しずつ試み始めています。
スパイスは、KTE内に住居と畑を持つ、プスパさんをリーダーとする女性グループと農園の更に北側、ゴペタールという地域に住む日本人と良く似た顔立ちのリンブー族のグループが中心になっています。紅茶しかやらないとかたくなに言っていたKTEも変わってきました。
更に、KTEと協力して、良質のブラックペッパーの採れる東ネパール平野部のジャパで、農民たちを協同組合形式に組織化する取り組みも始めています。

ネパリ・バザーロの果たす役割
スパイスを遠隔の地で生産すると、そこから品質を変えずにネパールの首都カトマンズまで運ぶという課題が生まれます。水分を多く含むジンジャーやターメリックは、乾燥させる必要があります。スライスして乾燥させますが、人工的な放射線照射をしないで数ヶ月長期保存するために、特にジンジャーは虫が好むので対策を考えねばなりません。乾燥させた後は、風通しの良い場所で保管していますが、最近では、真空にして保管することも検討しています。生産地でストックをするのは、KTEが行い、カトマンズまで運ぶのもその責任範囲です。加工から商品パッキング、出荷は、スパイシー・ホーム・スパイシーズ(SHS)の仕事です。
皆がどれほど注意を払っていても稀に品質の問題が発生することがあります。その時、誰の責任でどう改善するかを話し合わねばなりません。ネパリ・バザーロを含め、KTEとSHSの3者で話し合います。KTEとSHSでは改善への取り組み方に微妙な違いがあります。設備投資をして改善しようとする積極姿勢のKTE。そのためKTEはシステムや技術がかなり向上してきています。しかし、投資してコストアップした分は最終的にネパリ・バザーロに回ってきます。生産者の基盤の脆弱さを考えると仕方のないことですが、価格に厳しい日本の市場で商品価格に転嫁することができず辛い状況です。
SHSで仕事をしている女性たちは日々の業務を真面目に手を抜かず、こつこつとよく働きます。彼女たちの仕事が村の現金収入に繋がること、国際協力の新しい形を担っているという自覚を持って働いているのです。18歳から10年近く働き、今、全体を束ねる役割を担っているマヤさんは、このスパイスの仕事に意義を感じていると言います。「ネパリ・バザーロを信じ、いつまでもついていきます」と言ってくれます。
スパイスは、今後、その広がりと共に更に多くの地域に貢献していくことになりそうです。それは、地元の意識ある人々と協力し、地域毎の問題改善に取り組む可能性をも秘めています。一部、その取り組みも始めています。ネパールの特産品スパイスは、これからも、一人ひとりの想いを乗せて、新しい出会いの旅に案内してくれることでしょう。

(奨学生のママタさん(写真左)と自宅にて)

(verda2010夏 vol.31より)

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