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さとうきびから生まれたスピリッツ tsuna32 2024sm

沖縄・伊江島とラム酒と阿波根昌鴻さん(前半)

ていねいに造られたクラフトラムから伊江島の人と自然の魅力が伝わります

文・土屋春代

阿波根昌鴻さんについて、伊江島について、もっともっと発信したい、
伊江島を代表する製品がないかと探し、伊江島蒸留所のラム酒を知りました。
大きな賞をとるほどの高い品質で、原料のさとうきびは伊江島産のみをつかう村おこし製品です。
ラム酒は4大スピリッツの一つです。
蒸留酒は高温で熱してつくるので火の酒、魂に働きかける酒と言われます。
平和を願い土地返還闘争を徹底した非暴力で闘い抜いた阿波根さんは
とても穏やかで優しい人柄ですが、闘いを支えたスピリッツ(精神)は
火の酒のような激しさだったと思います。

沖縄・伊江島 悲願の島酒 イエラム誕生!

イエラム サンタマリア クリスタル
ステンレスタンクで熟成した「クリスタル」は、さわやかなサトウキビの甘い香りが新鮮なホワイトラム。モヒート、ダイキリなどラムカクテルを華やかに彩ります。サトウキビの爽やかな甘みと豊かな香りを感じます。
■【価格】  1500円(税抜き)
■【原材料】 サトウキビしぼり汁(沖縄県伊江島)
■【内容量】 300ml
■【アルコール分】 37%
■【製造者】 株式会社伊江島物産センター 伊江島蒸留所(沖縄県伊江島)
こちらの商品はお酒です。20歳以上の年齢であることを確認できない場合は、種類を販売いたしません。

イエラム サンタマリア ゴールド
オーク樽で熟成した「ゴールド」は、豊かな樽香とサトウキビの甘みが複雑に重なりあう贅沢なゴールドラムです。ロックやソーダ割りがおすすめです。
■【価格】  1600円(税抜き)
■【原材料】 サトウキビしぼり汁(沖縄県伊江島)
■【内容量】 300ml
■【アルコール分】 37%
■【製造者】 株式会社伊江島物産センター 伊江島蒸留所(沖縄県伊江島)
こちらの商品はお酒です。20歳以上の年齢であることを確認できない場合は、種類を販売いたしません。

実証実験の終わりが始まり
伊江島には川がなく、ため池だけでは島民に必要な生活用水を確保するのも難しく、ずっと水で苦労してきました。水を必要とするお米がつくれず、他の島のように自慢の泡盛=島酒を造れませんでした。
一方、水不足や強風に対して大変強いさとうきびは、台風が多く干ばつなど厳しい自然環境の沖縄ではなくてはならない基幹作物です。しかも、さとうきびは地球温暖化の要因といわれる二酸化炭素を多く吸収する環境に優しい作物で、畑の肥料や家畜の飼料にもなります。ところが、さとうきび作は重労働で低収入のため芋やタバコなどの作物に切り替える農家が増え、生産量が減り続けています。伊江島でも昭和の末頃に比べて10分の1ぐらいにまで減りました。しかし、芋やタバコなどは連作障害が出ますが、さとうきびは米と同じで連作障害がなく、継続できます。島では牛も飼っているので牛の飼料にもなり、土壌改良効果もあるさとうきびがないと島の他の産業が成り立ちません。そんな重要なさとうきび作を島の産業として存続、発展させるため新たな産業づくり、高付加価値製品の追求という模索の中でバイオ燃料の実証実験施設の誘致をしました。
2006年1月からさとうきびを原料に九州沖縄農業研究センターとアサヒビール主体のバイオエタノール事業の実証実験がスタート。実験終了後の施設の有効活用を検討する中で、島の人々が長年望んでいた島の酒を造ろうとラム酒製造が決まりました。アサヒビールの技術協力を得て2011年から第3セクターとして蒸留所が立ち上がりました。アサヒビールに出向していた、傘下のニッカウヰスキーのスタッフたちは蒸留酒の技術、味や品質のことなど惜しみなく教え、ウイスキーの樽も譲りバックアップしました。伊江島出身で沖縄島で泡盛を造っていた知念寿人さんが初代製造責任者となり待望の島酒造りが始まったのです。その後、知念さんは監督官庁である伊江村役場職員となり、商工観光課で蒸留所をサポートしています。

イエラムは世界でも稀なラム酒
ラム酒はさとうきびの搾り汁を精製して白い砂糖を作るときに出る廃糖蜜を有効活用するためにできたお酒でもあります。世界のラム酒の97から98%がこのトラディショナル製法で造られるラム酒です。この製法はインダストリアル製法とも言われる大量生産向きで安価に造ることができます。伊江島には製糖工場がなく黒糖工場なので、廃糖蜜が出ません。そこで、さとうきびを搾ったジュースをそのまま活かして発酵、蒸留、熟成させます。この製法はアグリコール製法と言われ、さとうきびの産地でなければ造れません。生産地による味の個性が出るため、他にない希少性と独特の味わい、奥深さと多様さが魅力の高級ラム酒です。しかし、産地であっても搾って直ちに製造にかからなければ劣化してしまうため、収穫期にしか造れません。伊江島蒸留所のすごいところは、搾りたてのさとうきびジュースを一旦濃縮して保管できる技術と設備があることです。これによって通年でラム酒を造ることができます。バイオエタノールの実験施設に備わっていた設備を、そのまま生かして製造ができたため、他の追随を許さないこだわりの〝クラフトラムづくり〟の環境が整いました。

イエラムサンタマリアのネーミングに込めた想い
南西諸島が原産地で琉球百合と呼ばれていた鉄砲百合は伊江島にもたくさん自生しています。幕末に医師のフォン・シーボルトが日本の百合の球根をヨーロッパに持ち帰り、美しい花が咲き、たちまち評判になりました。復活祭に用いられるイースター・リリーとして広まり、鉄砲百合はサンタマリア(聖母マリア)の花としてヨーロッパで愛されています。
沖縄から世界に出て人々に愛されている百合の花のように、マリアの花の咲く島、伊江島から世界に出て人々に愛されるお酒になってほしいという願いを込めてのネーミングです。鉄砲百合と伊江島のシンボルのタッチュー(城山)がロゴデザインになっています。

2代目製造責任者・浅香真さんの大切にするテロワール
浅香真さんは三重県鈴鹿市出身で、沖縄に憧れがあり移住しようと思っていました。沖縄島とほどよい距離の離島を候補に考え、知り合いのいる伊江島に下見に来て移住を決めました。丁度、蒸留所が立ち上がった時期でほぼ最初から入り、現在は責任者として引き継いでいます。浅香さんが大事にしていることは、伊江島のさとうきびで造ったお酒を伊江島で熟成させる、伊江島のテロワール(注)こそが大切でそれは外さないということ。どんどん新しい技術を取り入れて新商品を出して拡大しても大手に勝てるわけがなく、身の丈でやっていきたいと言われます。
原料のさとうきびはまだ伊江島のさとうきびの5%ぐらいしかラム酒にはなっていません。大半は黒糖になります。当分、原料に困ることはないと浅香さんは笑います。もっとラム酒が売れるようになり、さとうきび産業を絶やさないようにして島を守りたい。この島のために島のものを守るという思いを強く感じました。蒸留所で働いている皆さんにその思いがあります。造っている方達は地元の人にもっと飲んでもらいたいのですが、泡盛ほど安いお酒ではないのでなかなか普段気軽に飲んではもらえないようです。しかし、島の人々は特別な時やお土産に使うなど、伊江島の自慢の島酒として大事にしています。


伊江島のシンボルの城山(愛称:タッチュー)と穂を出したさとうきび。冬にはさとうきびの穂が出て真っ直ぐに伸びます。光を浴び、風にゆれる美しい銀色の穂は冬だけ見ることができます。©伊江島蒸留所


左:蒸留タンクの前で説明を受ける筆者。
右:イエラム サンタマリアゴールドはオーク樽でじっくり熟成させます。


島で美しく咲く鉄砲百合。©伊江島蒸留所


浅香さん(後列右から2人目)とスタッフの皆さんと。


暑い夏にピッタリの爽やかなカクテル、モヒート。作り方は簡単!グラスに、はちみつ(小さじ1)、ミントの葉(20枚程度)を入れ、ペストルやすりこぎで軽くつぶします。氷を入れて、ラム酒(クリスタル50ml)、シークヮーサー完熟果汁(小さじ1)を注ぎ、よく混ぜ、炭酸水(50ml)を入れ軽く混ぜてできあがり!見た目もおしゃれですね。


ダイキリ。ラム酒(クリスタル 45ml)、シークヮーサー完熟果汁(15ml)、はちみつ(小さじ1)をシェイクして、グラスに注ぎます。すっきりとしたお酒が飲みたい時に。

カクテル色々。右から2番目は、ジンジャーが効いていて飲みやすいジンジャーラム。グラスにラム酒(ゴールド 30ml)、はちみつ(大さじ1)、シークヮーサー完熟果汁(大さじ1)、ジンジャーエールスパイス(小さじ1)を入れよくかき混ぜ、炭酸水をゆっくり注ぎます。
左端は、ラムコーヒー。ラム酒(ゴールド/クリスタル 15ml)、ブラックコーヒー(150ml)、砂糖(適宜)、ミルク(適宜)を混ぜるだけ。ホットでもアイスでも◎。
左から2番目は山葡萄カクテル。氷を入れたグラスに、ラム酒(ゴールド/クリスタル 20ml)、山ぶどうジュース(40ml)に炭酸水(40ml)を加えて混ぜます。ラム酒はフルーツジュースとも相性抜群です!


ラム酒が香る、クリームチーズディップ。作り方は、クリームチーズ(100g)を常温に戻し、刻んだドライフルーツとくるみ、シークヮーサー果汁(小さじ1)、ラム酒(ゴールド/クリスタル 小さじ2)、はちみつ(小さじ2)を混ぜるだけ。クラッカーやパンに合う、大人のディップ。

※後半はこちらをご覧ください!