ホーム
> 特集
> カカオ栽培の仲間たち　tsuna25 2022a

カカオ栽培の仲間たち　tsuna25 2022a

カカオ栽培の仲間たち

～受け継がれるカカオ苗～

文：土屋春代

スコップ三線でリナさんの決めポーズ！広いハウスはリナさんがこれからいろいろな作物に挑戦するところ。楽しみですね！左から土屋、リナさん、茂さん、てつさん。

沖縄でカカオを育てチョコレートをつくりたい。それにより、沖縄の新しい可能性を拓くことができればと願い、2017年にスタートした『沖縄カカオプロジェクト』。プロジェクトの目的は他にもあります。その1つは福島の原発事故により放射能被害を受けている子ども達の支援です。そのため、汚染されていない環境で思いっきり体を動かし、安全な食品で免疫力の回復を図る保養を久米島で実施している保養施設、『沖縄・球美の里』の活動を応援することにしました。つながりを強めるため、久米島をカカオ栽培の拠点の一つにしたいと思い、カカオ栽培者を探しました。以前からネパリ・バザーロとお取引のあった久米島の熊谷由紀子さんからカカオ栽培に意欲ある阿嘉茂さんを紹介され、2018年6月に発芽2ヶ月のカカオ苗を100本、2019年７月に30本と、既に３年経ち成長したカカオ３本を購入し託しました。
〝やんばる（山原）〟と呼ばれる貴重な大自然が残る沖縄島北部でカカオ栽培を既にされていた久保徹浩（てつ）さんとは、名護市のビーガンレストラン
nicenessの桑原悠子さん、伸弘さんの紹介で2020年秋に出会い、プロジェクトに参加していただきました。
そして、2022年5月。茂さんの親戚の仲地リナさんがカカオ栽培に加わることになり、沖縄でのカカオ栽培が新しい段階に入りました！

やんばるのてつさんから久米島のリナさんへ
てつさんは沖縄に移住して後、農業に興味をもち農業者になりました。てつさんは「農業すること自体が自然破壊。だから、破壊を最小限にするため薬を使わず、肥料や虫除け、土の健康状態を知り、守ることなどに身近な環境中にあるものを生かす」という農法をされています。その裏付けの科学的、理論的なお話は私には難しくて分からないことが多いのですが、薬を使わない農業を目指す人にとっては〝目から鱗〟のお話で良き相談相手になっています。てつさんも若い人は宝だからと、経験で得た智恵や学んだ知識を惜しげなく伝授されます。てつさんのカカオの木は南米コロンビアで活躍中のカカオハンター・小方真弓
さんから苗を譲り受けて４年間、大切に育ててきたものです。大きく育ったカカオの木を親木として、苗を増やし、やがてカカオでいっぱいにしようとされています。てつさんは大事なその苗を新しい仲間にプレゼントするため久米島を訪れました。
仲地リナさんは農業が大好きな元気な女性です。キャッチフレーズは〝はじける農業！〟。親類の茂さんからカカオのことを聞き、興味をもちました。農薬を使わない農業に切り替えて３年目。新しい作物にもどんどん挑戦したいとも思っていました。そこに、てつさんから２本、茂さんから３本のカカオ苗をプレゼントされ、スタートを切ることができました。毎朝、畑に入ると「おはよう！今日も元気でいこう！」と作物たちに声をかけ、世話をするリナさんは、てつさんから受け継いだ苗たちを大事に抱え、声をかけていました。

阿嘉茂さんのカカオが育ち花が咲きました！
茂さんは2018年に沖縄カカオプロジェクトに参加、久米島で誰もしたことのないカカオ栽培に取り組みました。身近に経験者がいないため、情報もなく、最初はなかなか苗が育たず、茂さんは自信を失っているようにみえました。農業経験がなく何も適切なアドバイスができない私は、2017年と18年にカカオ栽培に成功している小笠原母島の生産者を訪ねた時に見たもの、聞いたことを伝えるしかありませんでした。そして「失敗はどんどんしてください。最初からうまくいくはずがない」と励まし、プロジェクト資金で育苗ハウス建設に協力しました。茂さんの懸命の努力が実り、2021年８月に白く可憐な花がついに咲いたと連絡が届いた時は飛び上がるほど嬉しく感動しました。次はいつ実がなるかと期待しています。

てつさんの畑は沖縄島北部のやんばる。そこから那覇に出て、フェリーで久米島の兼城港へ。私たちは港で待ち受け、リナさんの畑へご案内。共に旅したカカオ苗の様子を確認。