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野田村 山葡萄プロジェクト tsuna 2021s

受け継がれる地域の宝

文・土屋春代

2011年3月11日に起きた東日本大震災の支援で宮城県と岩手県を走り回っていた頃、岩手県北部の野田村とご縁ができました。2013年11月、海水を薪で炊く製塩法の「のだ塩」を椿油のコスメ「クーネ」に使用したいと訪ね、快諾していただきましたが、同時に野田村特産の山葡萄の販路開拓を頼まれました。品質の優れた素晴らしい山葡萄ですが販路が減少しているため農家さんが廃業の危機にあること、農家さんの多くが満蒙開拓団で戦後ようやく引揚げたものの故郷に戻れず、野田村の原野に入植してご苦労を重ねられた方達であることを知り、「野田村山葡萄プロジェクト」を立ち上げ、ワイナリー開設をメインに活動を開始しました。ワイナリーを応援してくださるサポート会員募集、ワイナリーの担い手を山梨と長野のワイナリーに案内、専門家を招いて山葡萄畑を見て助言をいただく等々、様々な支援活動をし、2016年10月の「涼海の丘ワイナリー」オープンと事業開始を見守りました。

年に数回、岩手や宮城の被災各地を支援するためにボランティアを募りツアーを実施してきましたが、そのツアーに参加した学生の中に山口光司さんがいらっしゃいました。山口さんは卒業を前に進むべき道を探し、三陸の水産加工会社にインターンで入ったものの馴染めず悩んでいる様子でした。山口さんには農業の方が向いているのではないかと思い、丁度、野田村が地域おこし協力隊員を募集しているのですすめてみました。現地を訪問した山口さんから「野田村で頑張ります!」という連絡が届きました。

「野田村山葡萄プロジェクト」は復興の支援活動のため、ワイナリーができ、山葡萄の確かな販路ができた農家さん達が喜んでくださっているのを見届けて終了しました。後を引き継いでくださった山口さんをこれからは力一杯応援します!

≪山口さんからのメッセージ≫

野田村地域おこし協力隊として活動しています山口光司と申します。ジュースのご紹介をさせて頂けること大変ありがたいです。
2020年、コロナ不況の影響で出荷が出来ず、廃棄せざるを得ない山葡萄が多量に出ました。棄てずに何とか活用出来ないかと、村内のジュースの加工施設をご厚意でお借りして加工をさせて頂きました。
山葡萄は、日本原産の固定種です。希少なものですが一房にとれる重量も少なく、販路が限られることや収穫、選果の人件費がかかり過ぎることによる収益率の低さから生産する農家も少ないのが現状です。しかし、収穫時期や品種によって多様に味が変化し、加工方法によってもさらに変化するため他の葡萄にはない高い可能性を秘めていると確信しています。
今回のジュースは、岩山さんの畑でとれた野村系という甘さの強い山葡萄を低糖度の時期、高糖度の時期と2回に分けて収穫したものを使用しています。ブレンドの比率や、加熱し、灰汁と澱をろ過するなど調整を重ねて納得のいく味になるまで何度も試行錯誤してつくりました。
ご贈答用としても「お祝い事といえば野田村の山葡萄ジュース」と言っていただけるような製品を毎年、改良を重ねてつくりたいと思っています。
震災から今年で10年の節目の年となり、野田村も野田村の山葡萄生産も大きな転換期を迎えていると思います。今まで野田村につながってこられた方々にもそうでない方にもこれからの行く末を見守って頂けると嬉しいです。これからも野田村と野田村の山葡萄を宜しくお願いします。

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2020年度産はお陰様であっという間に完売いたしました!2021年度産は12頃の入荷予定です。愉しみにお待ちください!ご注文はこちらから。

≪山葡萄農家の岩山さん(中央)≫

山葡萄の販売が思わしくなくなっても、ずっと山葡萄一筋に丹精込めて手入れを続けてこられました。それほど山葡萄が好きだったのです。村にワイナリーができて採算のとれる価格で引き取られるようになってからは、新しい種類の山葡萄を植えたい!もっと木を増やしたい!と、とても意欲的でした。手入れの指導をしながら山口さん(左)を見詰める眼差しは温かく、後継者ができた喜びに満ちていました。まさにこれから岩山さんのご苦労が報われようとしていました。しかし、2019年6月帰らぬ人となりました。

(つなぐつながる 2021春 vo.19より)