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インドのカカオ農園を訪ねて tsuna13 2019a

チョコづくり 未来づくり 沖縄産カカオの夢

インドのカカオ農園を訪ねて

文・丑久保完二

オーガニックカカオ

ネパリ・バザーロのチョコレート発売を控え、原料のカカオの生産者は、どのようなところで、どのような暮らしをし、どのような思いで生産しているのか、カカオ栽培の様子と共にお伝えしたいと思います。

カカオは、クリオロ、フォラステロ、トリニタリオという3種類に大きく分けられます。私たちが扱っているカカオは、フォラステロ種で南インドから来ています。そして、有機栽培で育てたものに限定しています。カカオは、年間平均気温が30度近くで気温差が小さく、年間降水量がとても多い高温多湿の環境が必要です。年間を通じて収穫できますが、南インドで最も多く採れる時期は8月(雨期)と12月(乾期)です。

変わりつつあるインド

インドは人口13億の大国で、共通言語は、北はヒンディー語と英語、南はカンナダ語と英語ですが、多民族国家で日常話す言葉は多種多様です。選挙となれば2000を超える政党から立候補者が出て1週間はかかります。現在のナレンドラ・モディ首相になってから年率7%の経済成長を続けています。モディ首相は貧しい家の出身で、厳しい生活者への配慮があり支持率が高く、国の政策も良い方向に向かっていて世界からも注目されるようになりました。

その政策の一つに、多くの起業家を生む土壌をつくることも含まれ、起業から3年間税金が免除されます。汚職が横行し政治家が肥えた腐敗政治から、良好な経済成長へと転換しました。子どもの教育や将来のために貯蓄をすると10年経てば元金が倍以上になるので、頑張って貯蓄をしようという意欲が高まりました。そして、経済発展の最も大きな成果は、テロの激減と安全安心な世界が広がったことでしょう。

有機農業を支える仕組み

有機栽培は、まだまだ希少な存在ですが意識の向上と共に伸びています。実践しているのは主に小規模農家です。大規模農家は大量に栽培し価格を下げることに重きを置くので、まず有機農業ではありません。有機農業は、小規模農家が支えていると言っても過言ではありません。

その小規模農家が有機農業を続けられるように支援する仕組みがインドにはあります。有機農業の重要性を訴える専門家の人々がコンサルタントを行い、英語が不得意な人には多様な彼らの言語から英語に翻訳して国のデータベースに登録するなど有機認証が得られるようにサポートします。有機認証にはお金がかかるので、その負担が減るように、小規模生産者のネットワーク作りもしています。ICS (InternalControl System) です。そして、10人から20人に1人、リーダーを置いて、きめの細かいフォローができるようにしています。

LISAとの出会い

2019年5月20日、南インドを代表する国際空港の一つ、バンガロール空港に到着し、そこから車で南へ300km、シモガという地方都市に到着しました。更に西へ100kmで今回の目的地ハララカワリ村に到着。ここでは20人の農家が有機農業を実践していました。周辺に高い山がないので、雨期の水を貯める貯水池を小高い丘の上につくり、1年を通じて農業用水を村に供給し農耕を可能にしています。

基本は自然農法です。リーダーはハリスさん。「フクオカ、ジャパン!」「フクオカ、ジャパン!」とICSマネージャーのスニールさんと、ここの基本を伝えようと声を張り上げて説明されました。「日本に福岡県はあるけど?」と思っている私に、福岡正信氏の自然農法が英訳され、それを学び、現在に至っていると教えてくれました。

牛舎は、蜘蛛の巣はそのまま(牛が蚊にさされないようにしているのだそうです)、カカオ畑では、モリンガ、コーヒー、シナモン他13種類の植物を共に育てています。多品種栽培は、ある作物の市場価格が下がった時に、他の作物で収入をカバーし安定させることができるという、今までの経験からもきているのだそうです。畑の道には草が伸びています。これも、土壌の保水能力を奪わないためと説明してくれました。

ハリスさんも小規模農家ですが、カカオの木が1500本あり、1本から年間約250kgのカカオポッド(カカオの実)が採れます。その中の種が約25kg。年間
4トン弱のカカオ豆が採れる計算ですが、小さい木もあるので、その半分の約2トンが生産量です。

ここでは、無駄が全くありません。カカオの皮は、牛の餌として最適です。肥料にもなります。もし、実が熟す前にカビなどでだめになれば、それは肥料になります。有機農業実践のもう一つの理由がここにあります。資金のない小さな農家(といっても、ネパールとは比較にならないほど豊かですが)は肥料や農薬にお金をかけられませんが、有機なら出費が少なく済み、且つ収入を生むのです。その概念は、LISA(LowInput Sustainable Agriculture) と言います。LISAは小規模農家を守っています。有機農業をしている小さな農家は、必ずと言ってよいほど、なんらかの有機農業の証明を持っています。ここでは、インドとアメリカの有機証明を取得しています。

次回訪問の約束

ジャイさんのおかげでオーガニックカカオの生産者たちとそれを支える有機農業の専門家たちに出会えました。福岡正信氏から環境と調和し自分たちの暮らしに合った農業を学んだという人々とこれから共に歩みます。乾期の収穫シーズンにまた来てくださいというハリスさんの誘いに頷き、次回の訪問を約束しました。今度は発酵や乾燥の様子を見てこようと思います。

そのカカオ豆を使って、現在チョコレート製造をスタートしています!!何と、原料はカカオ豆と黒糖のみ。72時間練りこんでいます。

チョコレートのブランド名は、“LISA(リサ)” と名付けました。いよいよパッケージも仕上がってきました!沖縄の紅型を使用しています。

LISAチョコレート” にこめた想いなど、詳細は、カカオフレンズの方には8月下旬~9月初旬にお手紙をお送りします。9月中旬発行の秋カタログでもご紹介をいたします。

楽しみにお待ち頂けましたら嬉しく思います!

お問い合わせ先:有限会社ネパリ・バザーロ
神奈川県横浜市栄区公田町1019-267
TEL:045-891-9939 E-mail:common@nbazaro.org

(つなぐつながる 2019秋 vol.13より)