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虹色の星座 和田美恵子さん tsuna24 2022s

虹色の星座 ~小さな光を繋ぐ未来へ~

カカオフレンズを訪ねる 連載 第 4 回

小田原市国府津 元「ちえのわ ハウス」オーナー

和田美恵子さん

取材・文・写真 簑田理香

広大な宇宙に散らばる小さい点のような星でも、線で繋いで結んでいくことで夜空に大きな星座が見えてきます。沖縄カカオプロジェクトは、インド、ネパール、沖縄、東北の生産者さんたちだけではなく、全国各地のカカオフレンズの皆さんお一人おひとりの思いや願いが結ばれて、未来の姿が描かれてゆきます。フレンズの皆さんは、どんな思いで、リサチョコレートを手にしてくださっているのでしょうか。カカオフレンズのお話を伺う連載、第4回をお届けします。

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「ネパリの土屋さんのやることは、呆れることばかりよね」と、和田さんは満面の笑を浮かべて、庭で摘んだハーブでお茶を入れてくださいました。海が見える場所に立つご自宅は、建物をL字型に囲む庭に、季節の草花、ハーブ、低木、そして近所の人にも使ってもらっているという畑に育つ作物が、居心地良さそうに混じり合って共存しています。

私にもできること、私にしかできないこと
和田さんは、小田原市で1993年から2014年まで、フェアトレードショップ「ちえのわハウス」を運営されてきました。
「フェアトレードには、大好きだった絵本と刺繍が導いてくれました。東南アジアの少数民族、モン族の刺繍絵本展が東京で開催されて、その展示会を小田原でもやりたいとお友達と企画しました。私はただ絵本と刺繍が見たい一心だったのだけれど、素晴らしい手仕事の品を買うことで、生産者の生計が立っていくことにつながるのは素晴らしいことだし、買うことなら私にもできると気づいて、それが始まりです」

まだ「フェアトレード」という言葉もなかった頃のこと。前年に立ち上がったネパリ・バザーロとは、お互いの活動にエールを送りあってきました。最初に「呆れるばかり」とおっしゃったのは、最大の褒め言葉ですよね?
「もちろん、そうですよ(笑)。以前、化粧品を作ると土屋さんが言った時も、それからチョコレートを作るって言う時も、自然派化粧品もフェアトレードのチョコレートも日本でも色々と売られている時代なのだから、そんな無謀なことはやめたら?と思ったんですけど(笑)。どちらにもしっかりファンがついているし、本当に呆れるばかりでしょ」

ネパリさんがやるなら応援するしかない!と、カカオフレンズになってくださった和田さんは、今から二十年ほど前に、ネパリ・バザーロ主催のスタディツアーで、初めて沖縄を訪れたそうです。ご夫婦で各地を旅しているという和田さんですが、沖縄は観光旅行の対象には考えられなかったと話してくださいました。
「戦争のことを思うと、ただ遊びに行くのがなんだか申し訳ないように思えて躊躇していたんです」

 第二次世界大戦の敗戦の年、和田さんは小学校一年生でした。
「新しい憲法ができて、担任の先生が戦争放棄って黒板に書いて、日本はもう戦争をしないって教えてくださった時、私はすごく感動したんです。教室中から、わーっと歓声も上がったこともよく覚えています。でも大人になって同級生に会って、あのときのこと覚えてる?と言うと『そうだっけ?』という反応もあって、あの感動を忘れられるものなの?と不思議でした」

敗戦から五年、朝鮮戦争が始まった時に、おじいさんが発した一言も、子ども心に不思議に思えることでした。
「新聞を読みながら『これで日本も景気が良くなるだろう』と言ったんです。おじいちゃんの言葉には、まず、え?戦争が始まってもいいの?という驚きが先に立ちました。確かに戦後の日本は、ものがなくてとても貧しい状態でした。でも、戦争であんなに辛い思いをしたばかりなのに・・・」

明治の男性にしては珍しく、例えば重い荷物は女性や子供に持たせない様に気を配る、とても優しく尊敬できる方だったそうです。それだけに「よその国で起きている戦争のおかげで日本の産業に需要が生まれて景気が良くなる。喜ばしいことだ」という考えは、到底理解できないことでした。大人になったらわかることなのかしら?という思いも当時は芽生えたそうですが、大人になっても「え?」という驚きは胸に抱えたままで、和田さんはフェアトレードの世界に入りました。

公正な仕事づくりを通して平和な社会づくりにつながるフェアトレード。生活の中で、もっともっと草の根的に広がっていくといいですね。
「本当に、毎日の生活が大切ですよね」と、ご自宅の玄関スペースに案内してくださいました。お店を閉めた後も、和田さんがホワイエと呼ぶ空間にフェアトレードの商品や資料を並べて、ご自宅を訪れる方に紹介することを続けています。
「社会からは現役を引退した高齢者だけれど、支えてくれている方や世界の生産者とのつながりを保ち続けられることが嬉しくて、感謝の気持ちでいっぱいなんです」

植物と作物が共存する庭で。農的暮らしを楽しまれている美恵子さんとネパリスタッフ。

取材・文・写真 簑田理香
栃木県益子町在住。地域編集室簑田理香事務所 主宰。

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